題名 | 光知覚神経ネットワークにおける高品質・高信頼化のための通信特性検証 |
著者 | *花田 雄一, 阿部 伸俊, 篠宮 紀彦, 勅使河原 可海 (創価大学工学部) |
Page | pp. 1572 - 1579 |
Keyword | 光ファイバセンサ, 光通信, イーサネット |
Abstract | 近年,光ファイバ通信の発展に伴い,FTTH(Fiber To The Home)に代表されるようなブロードバンドサービスが,一般の家庭や小規模オフィスへ幅広く普及している.さらに,光の散乱特性を利用し,光ファイバ自体をセンサとして機能させるヘテロコア光ファイバセンサが開発され,様々な環境情報をモニタリングするための研究が行われている.これら別々に発展している通信とセンシング両機能を,同じファイバシステムのインフラによって実現できれば,様々な効果が期待できる.本研究では,このような通信とセンシングを融合させた“光知覚神経ネットワーク”(Optical Sensory Nerve Network:OSN)を対象に研究開発を進めている. OSNは,ヘテロコア光ファイバセンサとEthernetスイッチから構成される通信とセンサの併用ネットワークである.ヘテロコア光ファイバセンサとは,光を漏らす点(ヘテロコア部)を作為的に作ることによって曲げに対する感度を高め,センサとして機能させる.このシステムでは,センサ情報をそのまま伝送することが可能であり,その情報を取得することによって空間の環境情報などを把握することができる.つまり,ドアや窓などの開閉時にヘテロコア部の曲率が変化するモジュールをファイバ上に導入することにより,データ通信とセキュリティ監視を同一のファイバで実現することができる. しかし,ヘテロコア光ファイバセンサを通信リンクとして用いる上で懸念すべき点がある.システム内でセンシングする際,光ファイバのヘテロコア部には曲げが与えられ,光の強度が減衰する.この光強度の減衰は,通信の観点から見ると,受信機に入る信号が減衰するため,符号誤り率の増加を招く恐れがある.さらに光信号が受光感度を下回った場合には信号自体を認識できなくなり,リンク断を引き起こす. OSNでは,上記のリンク断問題を解決するため,Ethernetにおける冗長化機構であるRSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)を適用している.しかし,データ転送実験により,通常のネットワークよりもOSNの方がリンク断発生時の通信断時間が長いという通信特性が明らかにされた.さらに,リンク断箇所やネットワーク構成の違いに依存して,通信断時間が異なることも明らかになった. これまでは,ネットワークを単純なリング型にのみ接続して実験を行ってきた.一般的には,ネットワークの冗長度を高めるために,より複雑な構成になっているため,OSNにおけるネットワークトポロジの違いが,通信品質にどのような悪影響を及ぼすのかを検証する必要がある.実証実験では,6台のスイッチを使用し,異なるネットワークトポロジの構成法によって,ネットワーク全体の平均通信断時間を測定した.実験結果から,ネットワーク全体の平均通信断時間が長くなる場合のトポロジ特性が明らかになった.また,同一のトポロジにおいても代替経路のリンクコストを変えることによって,経路切り替えが数回行われてしまい,通信断時間が長くなるという結果も得られた.今後は,実験によって得られた通信特性を基に,OSN構成法に関する要求事項を分析し、高品質・高信頼なネットワーク設計手法の検討を行っていく. |
題名 | Mobile IPv6を用いた通信回線共有方式における中心端末の外部リンク切断に伴う通信途絶回避方法 |
著者 | *谷本 慧, 石原 進 (静岡大学) |
Page | pp. 1580 - 1587 |
Keyword | Mobile IPv6 |
Abstract | 筆者らは,近接した複数の移動端末(Mobile Node:MN)が短距離高速リンクを用いて一時的なネットワーク(Alliance)を構築し,複数のMNが持つインターネットへの経路(外部リンク)を同時に利用して,各端末が利用可能な帯域を増大する手法:通信回線共有方式SHAKE(SHAring multipath procedure for a cluster networK Environment)を提案している.SHAKEを利用し,複数経路通信を行う端末をAlliance Leader(AL),ALのためにトラフィックを転送する端末をAlliance Member(AM)と呼ぶ.Mobile IPv6(MIPv6)を用いたMIPv6 SHAKEでは,ALおよびAMの外部リンクのアドレス(External Address:EA)をHome Agent(HA)に登録するが,このEAに対応するHome Address(HoA)を持つALの外部リンクが切断すると,複数の経路すべてが利用できなくなるという問題点があった.これはEA登録にHoAを持つALの外部リンクのみを用いているためである.本稿では,ALの外部リンクが切断しても他の経路を利用することで通信を維持するNever Disconnect SHAKE(ND SHAKE)を提案する.ND SHAKEでは,ALが自身の外部リンクが使用できない場合に,AMの外部リンクからAMのEA(以下,EAM)の登録を行うことで,ALとインターネット間の通信を維持する. MIPv6 SHAKEでは,ALが自身の外部リンクからBinding Update(BU)を送信する場合,BUの送信元アドレスにALのEA(以下,EAL)を設定する.しかし,ALの外部リンクが切断した場合,EALが使用できなくなる.そこでND SHAKEでは,EALではなく,EAMをBUの送信元アドレスとする.これはAM-HA間でイングレスフィルタリングによりBUが破棄されるのを防ぐためである.ALは,AMの外部リンクからHAにEAMの登録を行うために,まずAllianceを介してAMにBUを送信する.ALからBUを受信したAMは,HoA optionで示されているアドレスが,自身が保持しているALのHoAと一致していればAM自身の外部リンクからALのHAへBUを転送する. HAでは,EAMの登録が完了すると,Binding Ack(BAck)を送信する.BAckはBUの送信元アドレスに対して送られるため,HAはBAckの宛先アドレスとしてBUの送信元アドレスであるEAMを設定し,さらにALのHoAを含んだタイプ2経路制御ヘッダを挿入して送信する.AMはBAckを受信すると宛先アドレスとタイプ2経路制御ヘッダに含まれているALのHoAを入れ替える.そして,BAckの宛先アドレスがALのHoAである場合,Allianceを介してALに転送する. また,MNと通信相手(CN:Correspondent Node)間で直接通信可能なMIPv6の経路最適化をND SHAKEでも行う方法について検討を行った.ND SHAKEにおいて経路最適化を実現するためには,ALがAMの外部リンクからReturn RoutabilityおよびCNへEAMの登録を行う必要がある.しかし,AMがHome Test(HoT)を受信した場合,HoTはIPsecのESPにより暗号化されており,AMはこのHoTをALへ転送すべきかどうかを知ることができない.従って,AMはALへ転送せず破棄してしまう.Care-of Test(CoT)を受信した場合,CoTは暗号化されていないが,同様にAMはCoTを破棄してしまう.そこでHome Test Init(HoTI)に,新たに用意したSHAKE(S)フラグを追加する.ALはこのフラグをオンにして,EAMを送信アドレスとしたHoTIをAllianceを介してAMに送信する.AMはHoTIをALのHAへ転送し,HAではSフラグを追加したHoTIを受信すると,HoTIに含まれているHome Init Cookie(HoIC)を保持する.HAはCNからのHoTを受信すると,HoTに含まれているHoICが,保持しているHoICと一致しているかを確認する.一致している場合は,HoTにALのHoAを含んだタイプ2経路制御ヘッダを挿入してAMに送信する.AMはタイプ2経路制御ヘッダを処理し,宛先アドレスがALのHoAである場合はAllianceを介してALに転送する.また,ALからAllianceを介してCare-of Test Init(CoTI)を受信したAMは,CoTIに含まれているCare-of Init Cookie(CoIC)を保持し,CNへCoTIを転送する.CoTを受信すると,CoTに含まれているCoICと保持しているCoICが一致しているかを確認し,一致していればAllianceを介してALへ転送する. |
題名 | プロキシ中継型Mobile PPCの検討 |
著者 | *張 冰冰 (名城大学大学院理工学研究科情報科学専攻), 鈴木 秀和 (名城大学大学院理工学研究科電気電子・情報・材料工学専攻), 渡邊 晃 (名城大学大学院理工学研究科) |
Page | pp. 1588 - 1592 |
Keyword | 移動通信, Mobile IP, Mobile PPC, Proxy, モバイル |
Abstract | ノートパソコンやPDA(Personal Digital Assistant)などのモバイル端末の普及や無線ネットワークの環境の普及により,いつでも誰でもどこからでもネットワークへのアクセスが可能なユビキタス社会を実現するために,移動しながら通信を行える環境が要求されている. TCP/IP では,IPアドレスがノード識別子の役割だけではなく端末の位置情報を含んでいるため,端末が通信中に異なるネットワークに移動すると異なるIP アドレスを取得する.トランスポート層ではIP アドレスが通信識別子の一部に用いられており,端末が移動してIP アドレスが変化すると別の通信と判断され通信が継続できない.そこで,端末が移動してIP アドレスが変化しても,それまで行われていた通信を継続させる移動透過性の研究が盛んに行われている.移動透過性を実現する技術には,特殊な第3 の装置を使用するプロキシ方式とそれを必要としないエンドツーエンド方式がある.プロキシ方式は,移動端末と通信相手の間にプロキシサーバを置き,そのプロキシサーバが移動端末のIP アドレスの変化を隠蔽させる.エンドツーエンド方式は通信する両端末間で課題を解決し,上位のソフトウェアに対してIP アドレスの変化を隠蔽する. プロキシ方式で移動透過性を実現する方式としてMobile IPが提案されているMobile IP は, プロキシサーバとしてHA(Home Agent)を使用する.HA は移動端末(以下,MN)のIP アドレスの管理や通信相手端末(以下,CN)からMN へ送信された通信パケットを受信し,MN へカプセル化転送を行う役割を持つ.MN からCN へ通信パケットは直接送信される.この方法によりMNが移動してIP アドレスが変化しても通信を継続させることができる.しかし,Mobile IP はHA が必須であり,通信経路がそのHA を経由するために冗長な三角経路となる.また,MNとHA間ではカプセル化が行われるために,オーバヘッドが発生し,通信効率が低下するという課題がある. そこで我々は,移動透過性を実現する一方式としてエンドツーエンド方式で移動透過性を実現するMobile PPC(Mobile Peer to Peer Communication)の研究を行っている.Mobile PPC は,通信開始において通信相手端末のIP アドレスを知る方法と通信中に移動した通信相手端末のIP アドレスを知る方法を分けて考えている.前者の解決には,既に実用化されているDynamic DNS(以下,DDNS) を使用し, 後者の解決に対してMobile PPC を使用する.Mobile PPC では,MNとCN間で通信を開始する際,認証ネゴシエーションを行って暗号鍵を共有する.その後,暗号化したTCP/UDP通信を開始する.このとき,両端末はIP 層にIPアドレス変換テーブルCIT(Connection ID Table)を生成する.CITには端末の移動前と移動後のコネクションID情報が含まれている.しかし,この時点ではMNは移動していないため,移動後の情報は空の状態となっている. MN が別のネットワークへ移動し,新たなIP アドレスを取得した場合は,MN はCNに対して新しく取得したIP アドレス情報を含むICMPパケットを送信し,両端末のCITに移動後の情報を追加する.以後の通信パケットは,更新したアCITをもとにアドレス変換処理を行う.この方式によりエンド端末の上位ソフトウェアからIP アドレスの変化を隠蔽することができ,通信を継続させることが容易に実現できる. Mobile PPC では, CN がMobile PPC の機能を実装していなくても通信を開始することは可能であるが、MNが異なるネットワークに移動すると,通信を継続させることができない. CN はインターネット上の一般サーバである可能性もあるので,それらに改良を加えてMobile PPCの機能を実装することは望ましくない.そこで, CN がMobile PPC を実装していない場合でも,移動透過性を保証するための仕組みがあることが望ましい.これらの課題を解決するためにMobile PPCのプロキシ型GEP(GSCIP Element for Proxy)を用いた手法を提案する.本提案では, CN がMobile PPCを実装していない場合はGEPを経由してアドレス変換を行い,通信パケットをCN に中継させる.この方式によりCNは通信相手がGEP のように見えるため,MN が移動してIP アドレスが変化しても通信を継続させることが可能となる. |
題名 | IPv4/IPv6混在環境で移動透過性を実現するMobile PPCの検討 |
著者 | *寺澤 圭史, 鈴木 秀和, 渡邊 晃 (名城大学) |
Page | pp. 1593 - 1599 |
Keyword | 移動透過性, Mobile IP, IPv6, デュアルスタック |
Abstract | 「IPv4/IPv6混在環境におけるMobile PPCの検討」 IPv4 がIPv6への移行は必然と考えられているが,IPv6 へ一挙に移行するのは困難であり,当分の間IPv4 とIPv6 が混在するネットワーク環境が続くと予想される.このようなネットワーク環境においても,移動透過性を実現できることが望ましい. 我々はIPv4 における移動透過通信を実現する技術として、Mobile PPC(Mobile Peer to Peer Communication)[1]を提案している.Mobile PPCは,エンドエンドで移動透過性を実現できる通信プロトコルである. IP層にCIT(Connection ID Table)と呼ぶアドレス変換テーブルを保持し,通信中にIPアドレスが変化した場合,CU(CIT UPDATE)ネゴシエーションを行ってCITを更新する.移動後の通信は,更新されたCITに従ってアドレス変換を行うことにより上位層からIPアドレスの変化を隠蔽して通信を継続する. 現在のMobile PPCはIPv4スタックへの実装を完了しており,IPv6スタックにも同様の考え方で適用可能である.しかし,IPv4とIPv6のネットワーク間を端末が移動した場合,アドレスの変化だけでなくアドレス体系も変化するため現在のままでは通信を継続することができない.本研究では,Mobil PPCv4とMobile PPCv6を統合し,IPv4/IPv6混在環境においても自由に移動可能なMobile PPCを提案する. IPv4/IPv6混在環境における移動パターンは,MN又はCNどちらかがデュアルスタックネットワークに存在する互換ネットワーク間通信とCNとMNがそれぞれIPv4ネットワークとIPv6ネットワークに存在する異種ネットワーク間通信の二つに分けられる. 前者のパターンでは,Mobile PPCv4とMobile PPCv6を統合し,かつIPv4とIPv6のアドレス体系の違いを吸収するトランスレータ機能の追加が端末に必要となる.Mobile PPCの統合は,移動前と移動後のアドレス体系が異なっていても変換を可能とする.トランスレータ機能はIPv4とIPv6ヘッダを相互に変換し,アドレス体系の変化を吸収する.移動時の通信動作は以下のとおりである.デュアルスタックネットワークに存在するCNとIPv6ネットワークに存在するMNがIPv6通信をしているときにMNがIPv4ネットワークに移動した場合,IPv4通信しか行えない.そこで,送信時は上位層から送られてくるIPv6パケットをトランスレータによりIPv4パケットへ変換し,かつMobile PPCでアドレスを変換を行うことによりIPv4通信を行う.受信時は,受け取ったIPv4パケットをトランスレータによりIPv6パケットに変換し,Mobile PPCでアドレス変換を行ってから上位層にIPv6パケットを送る. 後者のパターンでは,IPv4ネットワークと IPv6ネットワークの間にNAT-PTがあることを前提としMobile PPCプロトコルにMappingネゴシエーションを追加する. NAT-PT は,パケットのIP ヘッダをv4とv6の間で相互に変換して,異種ネットワーク 間の通信を可能にする装置である. 移動時の通信動作は以下のとおりである.CNとMNがIPv4ネットワークでIPv4通信中に,MNがIPv6ネットワークへ移動する.IPv6ネットワークへ移動したMNはNAT-PTから配布されているプレフィックスを元にNAT-PTのIPv6アドレスを作成する.次に,Mappingネゴシエーションを行うことにより,NAT-PTのIPv4ネットワーク側のアドレスを取得し,NAT-PTのマッピングテーブルの生成を行う.最後に,CUネゴシエーションによりCNとMNがお互いNAT-PTが通信相手となるようにCITの内容を更新する. |