題名 | 動的な遠近感を演出する香りのパルス射出提示手法 |
著者 | *大津 香織, 門脇 亜美, 佐藤 淳太 (慶應義塾大学理工学部), 坂内 祐一 (キヤノン), 岡田 謙一 (慶應義塾大学理工学部) |
Page | pp. 1350 - 1357 |
Keyword | 嗅覚情報, パルス射出, 嗅覚ディスプレイ, 呼吸同期, 遠近感 |
Abstract | 他のメディアと共に香りを用いる場合には,時間に伴って変化する映像や音声の動きに合わせて香りの提示を制御する必要がある.特に映画のシーンでは,映像に適合した香りを配信することによりさらに臨場感が高まると考えられる.しかし,これまでは残り香や順応の影響により細かな射出制御ができず,香りで動きを演出することが不可能であった.そこで我々は,微小時間の香り提示であるパルス射出を用いてこれらの問題にアプローチし,動きのある映像や音声に同期して動的な遠近感を演出する香りの提示手法の構築を目指した.その際,人間の香りの感じ方に着目し,パルス射出に対する嗅覚特性を主観評価により測定した.その結果,香料の使用射出量を2 倍系列に設定することにより誰もが遠近を感知できること,また射出量を2 呼吸ずつ段階的に変化させて香りを提示することで動的な遠近感を感じることができると分かった.評価実験により,本提案手法は,動的な遠近演出を可能とするものであることが示された.映像や音声に香りを付加する際,この提案手法を用いることによってメディア間の同期が容易になると期待される. |
題名 | ラジオとWWWのメディア連携 |
著者 | *糸賀 優樹, 村田 嘉利, 高山 毅, 佐藤 永欣 (岩手県立大学ソフトウェア情報学部), 佐藤 大誠 (株式会社セントラル情報センター), 堀口 賞一 (NTTドコモ サービス&ソリューション開発部) |
Page | pp. 1358 - 1365 |
Keyword | ラジオ, Web, 放送連携 |
Abstract | ラジオ,特にコミュニティFMは,FMピッカラが新潟県中越沖地震の際に地元向けに震災関係情報を流して活躍したように,地域に根ざしたコミュニケーション手段として有効である.しかし,広告収入の落ち込みから2/3の局が赤字とも言われている.ラジオの再活性化のためには,新たな表現機能の追加が有効と考えられる.ラジオは,表現機能としては聴覚情報に限られているが,多くの人が時間と情報を共有する点で優れているといえる.その一方,インターネットは表現できる機能は多彩であるが,個々の人がアクセスしに行くPULL型の情報形式である.本論文では,ラジオからWebサイトへのアクセスをコントロールすることにより,ラジオに視覚情報を付加した新たな同報メディアを提案する.また,システムの開発を行い,主観評価したので報告する. |
題名 | 視聴者主導型インターネット放送システムの提案 |
著者 | *齊藤 義仰, 磯貝 佳輝, 村山 優子 (岩手県立大学 ソフトウェア情報学部) |
Page | pp. 1366 - 1371 |
Keyword | インターネット放送, 視聴者主導, AdlivTV |
Abstract | 本稿では,視聴者を中心として放送を構成することができる視聴者主導型インターネット放送システムについて提案し,プロトタイプシステムの設計と実装を行う.プロトタイプシステムではチャットによるコミュニケーションの他に,視聴者が放送者の画面上に数種類の意味をもつアイコンを表示させることができ,放送者に対して「ここを撮ってほしい」「あれをやってほしい」といった要求ができる.放送者はその要求に応えることで,視聴者にとって魅力的な放送を提供することができる.放送実験により,視聴者主導のインターネット放送では,従来型の放送と比べ,視聴者が長時間にわたり継続して放送を見続ける傾向があることがわかった. |
題名 | 視聴者からの能動的な入力情報を用いたダイジェスト動画自動生成手法に関する検討 |
著者 | *磯貝 佳輝, 齊藤 義仰, 村山 優子 (岩手県立大学ソフトウェア情報学部) |
Page | pp. 1372 - 1377 |
Keyword | インターネット放送, ダイジェスト生成 |
Abstract | 近年,インターネット回線の広帯域化が進み,インターネットを介した映像配信サービスが日常的に利用されるようになってきた.インターネット放送は,安価なWEBカメラ,汎用PCとインターネット回線さえあれば誰でも簡単に行うことができるため,今後さらに広がっていくと考えられる.しかし,テレビを含む従来の映像配信サービスは,放送者が映像を配信し,視聴者が配信された映像を見るという,放送者から視聴者への一方向サービスとなっており,視聴者からの能動的な入力情報を得ることができない.そのため,視聴率のような受動的な視聴者情報しか用いることができず,放送内容の詳細な分析を行うことが難しいといった問題がある.例えば,視聴率ではどの程度の視聴者が見ているということしかわからなく,視聴者がその放送に対して何を感じたのかについて分析を行うことはできない.よって,放送内容を分析するためにも,双方向サービスを実現することが,インターネット放送における重要な課題の一つとなっている. 一方,著者らは毎年,岩手県立大学の学位記授与式をインターネット中継してきたが,平成19年度からは双方向性を持たせた視聴者主導の放送システム導入に取り組んでいる.本システムは,文字によるチャット機能や,カメラ撮影者に対して視聴者が撮影して欲しい対象や方位などを指示できる機能を備えており,視聴者からの能動的な入力情報を蓄積することが可能である.視聴率のような受動的な情報だけでなく,このような能動的な情報を有効に活用する事で,放送内容をより適切に分析することが可能になると考えられる. 本研究では,その一手法として,視聴者から能動的に入力された情報を用いたダイジェスト動画自動生成手法について検討する.提案システムに適用する前段階として,現存する類似サービスからサンプルを取り検証する.現存するものとしては,映像のタイムラインに合わせて視聴者がコメントできるオンデマンド型映像配信サービスがある.当該サービスでは,映像に対してコメントを行った場合,コメント内容と同時にどの場面へのコメントなのかが記録される.これらのコメント情報を抽出することで,映像に対してどの場面にコメントが集中しているかを分析することが可能である.視聴者からのコメントは,印象的な場面に対し行われるものと仮定すると,コメントの多い場面をダイジェストの1カットとすることができる.このように,動画へのコメントの濃度を分析し,上位に上がる場面を結合した時にダイジェスト動画として成立するのかを検証する. |
題名 | 連続メディアデータ放送のためのP2P配信システムの設計と実装 |
著者 | *鈴木 健太郎, 後藤 佑介 (京都大学大学院情報学研究科), 義久 智樹 (大阪大学サイバーメディアセンター), 金澤 正憲 (京都大学学術情報メディアセンター) |
Page | pp. 1378 - 1385 |
Keyword | 放送型配信, 待ち時間, ストリーミング, P2P, ピア選択 |
Abstract | 近年の放送通信融合環境の高まりにともない,インターネットを利用して動画を 視聴するサービスが注目を集めている. サーバ・クライアント型のネットワークでは,複数のクライアントが同時にサー バに接続すると,サーバが配信に必要となる帯域幅が増加し,クライアントが データの受信を要求してから再生開始するまでに発生する待ち時間が増加する. このとき,クライアントはサーバだけでなく他の端末からもデータを受信できれ ば,サーバに集中する負荷が分散され,待ち時間を短縮できる. そこで,P2P(Peer-to-Peer)ネットワークを利用した動画配信を考える. P2Pネットワークでは,ピアと呼ばれるクライアントが1つ以上接続し,ネット ワークを構成する. ピアは他のピアと通信を行い,それぞれがサーバとクライアントの役割を果たす. P2Pのネットワーク構成の形態として,ピアのみで構成されるピュア型や,ピア とサーバで構成されるハイブリッド型があるが,今回はハイブリッド型P2Pを対 象とする. ハイブリッド型P2Pでは,サーバは動画配信を行い,ピアと呼ばれるクライアン トは,ダウンロードだけでなく他のピアからデータを要求されたときはサーバと して動作する. サーバ・クライアント型に比べて,ピアがデータの供給を行うため,サーバに データを要求するクライアントの数が減少する. サーバは必要となる帯域幅が減少し,クライアントの待ち時間が短縮される. 筆者らはこれまで,P2Pネットワークを利用した動画視聴ソフトウェアとして Brossom (Broadcasting System with P2P Environments)を作成してきた. Brossomでは,P2Pネットワークを用いてストリーミング配信を行う. Brossomのストリーミング配信では,データをセグメントと呼ばれる部分に等分 割して配信する. データの先頭部分のセグメントの受信が完了すると再生を開始できるため,デー タをすべて受信しなければ再生を開始できないダウンロード配信に比べて,デー タ受信時の待ち時間を短縮できる. 現在のBrossomで使用しているストリーミング配信では,各ピアが使用できる帯 域幅の大きさを考慮していない. しかし,実環境では,各ピアが使用できる帯域幅は異なっており,使用できる帯 域を考慮しなければ,再生中にデータの途切れが発生する. ここで,ダウンロードの要求を出すピアを要求ピア,データを供給するピアを供 給ピアとする. 使用できる帯域幅が小さい供給ピアを要求ピアが選択した場合,セグメントの配 信時間が大きくなる. 供給ピアから受信したセグメントの受信終了時刻が再生開始時刻に間に合わない 場合,再生時に途切れが発生する. 一方,使用できる帯域幅が大きい供給ピアを優先的に選択すると,帯域幅が大き い供給ピアにデータの要求が集中するため,P2Pネットワーク全体の転送効率が 低下する. このため,要求ピアは,P2Pネットワーク全体の負荷と再生中の途切れを考慮し て,データ受信に使用する供給ピアを選択する必要がある. そこで後藤らは,P2Pネットワークのデータ受信時におけるピア選択手法を提 案,評価した. 提案手法では,各供給ピアが使用できる帯域幅をもとに,セグメントの配信終了 時刻が一番早い供給ピアを選択してスケジューリングを行う. 使用できる帯域幅とセグメントデータの再生時間を考慮して,供給ピアを分散し て選択することで,再生中の途切れの発生を抑えながら負荷分散を行う. 具体的には,帯域幅が大きい供給ピアから順番に,セグメントを先頭から割り当てる. 要求ピアは,ある供給ピアからセグメントのダウンロードが終了すると,次のセ グメントを配信した場合の終了時刻が一番早い供給ピアに要求する. これをすべてのセグメントのダウンロードが終了するまで行う. この手法では,帯域幅が大きいピアがすべてのセグメントを配信するのではな く,帯域幅が小さい供給ピアからもダウンロードをできる限り行うため,ネット ワーク全体に負荷が分散する. 提案手法のシミュレーション評価では,ランダムで供給ピアを選択する場合と比 較して待ち時間が減少するという結果が出ている. 本研究では,この手法をBrossomに実装し,評価を行う. |