(セッション表へ)

マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 5F  マルチメディア(2)(DPS)
日時: 2008年7月10日(木) 10:20 - 12:00
部屋: コスモ(2)
座長: 柴田 義孝 (岩手県立大)

5F-1 (時間: 10:20 - 10:45)
題名伝送遅延を考慮した分散機器の動作タイミング制御フレームワークの設計
著者*山本 佳代子 (東京大学大学院情報理工学系研究科), 早川 裕志 (九州大学大学院システム情報科学府), 田頭 茂明 (九州大学大学院システム情報科学研究院), 北須賀 輝明 (熊本大学大学院自然科学研究科), 中西 恒夫, 福田 晃 (九州大学大学院システム情報科学研究院)
Pagepp. 1151 - 1157
Keyword分散システム, ホームネットワーク, DLNA, フレームワーク
Abstractホームネットワークを構築するためのプラットホームの普及に伴い,ネットワークで接続された家電機器の連携やコンテンツの共有を実現する枠組みが整いつつある.既存のプラットホームは一対多の機器連携手法を規定しておらず,ベンダ毎に異なる手法を採用しているため互換性を保つことが困難である.このような環境下では,ユーザは依然として機器の互換性やケーブルの接続などに注意を払わなければならず,プラットホームのネットワーク機能が活かされていない.本稿では,メディアの形式に依存しない汎用的な分散機器のタイミング制御フレームワークの提案・設計を行う.複数機器がネットワークを介して連携を行う際には,輻輳やフレームの衝突による伝送遅延を考慮する必要がある.このため,提案フレームワークは即時値適用法と遅延予測法の2 つの手法を用いて遅延の見積もり行う.設計にもとづいて実装したプロトタイプシステムを用いて評価を行い,遅延見積もり手法の有効性を示す.

5F-2 (時間: 10:45 - 11:10)
題名開放型分散部分空間結合に基づく共生アプリケーション連携法
著者*酒徳 哲, 黒田 貴之, 北形 元, 白鳥 則郎 (東北大学電気通信研究所/情報科学研究科), 木下 哲男 (東北大学電気通信研究所/情報科学研究科/サイバーサイエンスセンター)
Pagepp. 1158 - 1166
Keyword共生コンピューティング, アプリケーション連携, 部分空間結合, 協調作業環境
Abstract近年,複合現実感技術や仮想空間共有技術が注目されている.これらの技術を応用することで,地理的に離れた利用者同士があたかも同じ空間に存在しているかのような協調作業・コミュニケーションが可能となる.しかしながら,既存のシステムでは,利用者が自由に空間やアプリケーションを構成するのは困難である.そこで,本論文では,ネットワーク上に分散配置した空間やアプリケーションの組み合わせによる協調作業環境構成法を提案する.これによって,利用者が自身の要求や状況の変化に柔軟に対応可能な協調作業環境構成基盤の実現を目指す. 既存の3次元仮想空間構成法として,CyberWalkがある.CyberWalkでは,最初に空間全体を設計し,それを部分的な空間に分割管理することで,効率的な空間管理を実現している.しかし,空間が単一の組織で管理されるため,利用者による空間構成の自由度には制限がある. また, 3次元仮想空間上でアプリケーションを利用する手法として,Behavior3Dなどがあり,それらの既存手法によって,アプリケーションを物理的な動作によって操作することが可能となる.しかし,その機構が当該アプリケーション内に閉じているため,アプリケーションの組み合わせ利用に制限があり,利用者が直感的に環境を構成することができない. 本論文では,まず,分散型部分空間の結合による開放型の空間構成法を提案する.本構成法では,部分的な空間を個別に設計・公開し,そのそれぞれを利用者端末間で共有する.利用者端末は,各部分空間を空間の結合関係情報に基づいて配置することで1つの空間を構成する.これによって,空間を複数の組織によって管理することが可能となり,利用者が自由に空間を構成することが可能となる. 次に,オブジェクトベースのアプリケーション間連携方式を提案する.本方式では,アプリケーションは空間上のオブジェクトと対応付けられる.アプリケーションはオブジェクトに発生する物理的なインタラクションを入力として,またオブジェクトの形状やテクスチャの変更を出力として動作する.また,アプリケーションは,動作の際にインタラクション要求を送信して他のアプリケーションと連携を図る.送信されたインタラクション要求は,空間の媒介により,インタラクションを発生させ,このインタラクションを入力として連携相手となるアプリケーションが動作する.この方式によって,利用者は,共生空間上のアプリケーションを実空間上の道具のように連携動作させることが可能となる. 提案手法を実現するシステムとして,空間共有クライアント,空間共有サーバ,およびアプリケーションサーバを設計した.空間共有クライアントは,空間を構成し,構成した空間に基づいて利用者やアプリケーションから要求されたインタラクションを媒介する.空間共有サーバは,部分空間を提供し,空間共有クライアント間で共有する.アプリケーションサーバは,発生したインタラクションに基づいてアプリケーションを起動し,その出力やインタラクション要求をクライアントに送信する. 以上の設計に基づいてプロトタイプシステムを実装した.プロトタイプシステムとして,空間共有クライアント,空間共有サーバ,アプリケーションサーバに加えて,アプリケーションサーバによって提供される黒板アプリケーションとレーザーポインタアプリケーションの2つのアプリケーションを実装した. このプロトタイプシステムの動作実験として,空間構成およびアプリケーション連携についてそれぞれ実験を行った. まず,複数のサーバに分散配置した部分空間から空間を構成する実験を行った.この実験によって,ネットワーク上で分散した部分空間が,利用者端末上において1つの空間として利用可能であることを確認した. 次に,アプリケーション連携の実験として,異なるアプリケーションサーバによって提供される2つのアプリケーションを連係動作させる実験を行った.この実験において,片方のアプリケーションが利用者の操作によって動作したとき,その動作で発生したオブジェクトを指し示すというインタラクションによって,もう片方のアプリケーションが動作したことを確認した.この結果から,ネットワーク上で分散したアプリケーションが,物理的なインタラクションによって連係動作可能であることを実証した. 結論として,本論文で提案する,開放型の空間構成法と,オブジェクトベースのアプリケーション間連携方式によって,ネットワーク上に分散配置した空間やアプリケーションの組み合わせによる協調作業環境の構成が実現した.これによって,利用者の要求や状況の変化に柔軟に対応可能な協調作業環境構成基盤を実現することが可能であると言える.

5F-3 (時間: 11:10 - 11:35)
題名メディアストリーミングにおける高速移動通信網に適した動的符号化レート制御手法の検討
著者*廣本 正之 (京都大学 大学院 情報学研究科), 筒井 弘 (大阪大学 大学院 情報科学研究科), 越智 裕之 (京都大学 大学院 情報学研究科), 小佐野 智之, 石川 憲洋 (NTTドコモ サービス&ソリューション開発部), 中村 行宏 (立命館大学 総合理工学研究機構)
Pagepp. 1167 - 1176
Keywordストリーミングシステム, レート制御, トランスコーダ, TCP/IP
Abstract移動通信端末においてネットワーク経由での動画像の視聴を行う場合,電波の受信状態の変化などにより通信帯域の大幅な変動や一時的な切断が発生するため,固定ビットレートでの配信では画像の乱れ等の発生や再生自体が停止する可能性がある.本研究ではこれらを回避するため,通信品質の変化に応じ動画像ビットレートの動的制御を行うストリーミングシステムを提案する.提案システムでは,サーバ側で実時間に対するトランスコード処理の遅延を検出することによりネットワークの変動を感知し,それに応じたレート制御を行う.本研究では特に高速移動通信網を想定し,発生しうる複数の帯域変動パターンに対し提案手法の評価を行い,画像の途切れ等のない安定したストリーミングが行えるレート制御手法の検討を行った.

5F-4 (時間: 11:35 - 12:00)
題名時間属性を持ったマルチメディアによる動画ダイジェスト手法
著者*伊藤 秀和 (中京大学大学院情報科学研究科), 濱川 礼 (中京大学情報理工学部)
Pagepp. 1177 - 1181
Keywordマルチメディア, 動画ダイジェスト, 時間属性, Time-Pliant Multimedia Objects
Abstract 本研究は,限られた時間の下で複数の動画を効率良く視聴するための動画ダイジェスト手法について考察している.近年,YouTubeなどの動画サイトの普及により多くのマルチメディアが配信されている.しかし,これらのマルチメディアは再生時間が決められている.そのため,内容を把握するためには再生時間以上の時間が基本的には必要であり,複数のマルチメディアでは最低でも各再生時間分の時間を要してしまう.従って,これらの視聴には必然的に膨大な時間と労力が必要となる.現在,スポーツ映像やニュースなどの限定されたマルチメディアでは,動画ダイジェストの研究が盛んに行われており再生時間を短縮させるための効率的な手法が考案されているが,動画サイトなどの不特定のマルチメディアにおいては,効率的な手法は少ない.また,動画サイトのような膨大な数のマルチメディアにおいては,一つ一つ再生時間を短縮させて視聴したとしてもまだ膨大な時間を要してしまう.従って,これら複数のマルチメディアをもっと効率良く視聴するための手法.そして,限られた時間の中で視聴するための手法が必要となる.本研究ではこの問題の解決策としてTime-PliantMultimedia Objectsの概念を適用している.この概念にはTeXのglueを拡張させたtemporal glueという考えがあり,オブジェクト(シーン)毎に時空間における伸縮パラメータを持っている.これによりマルチメディア全体の再生時間を伸縮させたときに各シーンはパラメータに従って再生時間を伸ばしたり縮めたりする事が可能となる.このパラメータをマルチメディアに付与するにはシーン毎の重要度を算出する必要がある.重要度は高ければ長めに再生させ,低ければ短めに再生させるようにパラメータを設定する.この重要度の算出法として,ユーザプロファイリング(再生操作履歴)を用いた再生頻度による重要度算出法を提案する.以上より,視聴者が指定した視聴時間を基にシーン毎の再生時間が算出できる.しかし,この概念はシーン毎の再生時間を決める事はできるが映像などの短縮法に関しては記述されていない.一般的に文章においては,流し読みや速読といった数多くの手法を用いて時間を短縮させることが可能である.これに対して動画などのマルチメディアにおける再生時間の短縮法は主に2つある.1つはシーンをカットする事により再生時間を縮める方法,もう1つは再生速度を速くする事により再生時間を縮める方法がある.本研究では,音が小さく映像のあまり変化しないシーンまたは視聴者にとって無駄なシーンとなる部分はシーンをカットする.そして,その他のシーンでは再生速度を速くすることにより目標とする再生時間までシーンを短縮させる手法を提案している.各シーンの検出方法として,音が小さく映像のあまり変化しないシーンは,音のパワーと分割カイ2乗検定法を用いる事によって検出ができる.視聴者にとって無駄なシーンは,複数人からのユーザプロファイリング(再生操作履歴)を用いる事によって検出ができる.その他のシーンの再生速度は,目標とする再生時間とカットしたシーンの再生時間から算出する事ができる.以上のことにより,限られた時間の中で視聴する事が可能となった.この手法により評価実験を行った.実験の結果,シーンのカットにおいては再生時間を短縮させてもほぼ内容を理解する事ができた.しかし,極度の再生速度の変化はシーンをカットしたものより理解の妨げとなる可能性があり,一部の音声付のマルチメディアでは不快な感情が表れた.この事から人は再生速度には敏感であることが明らかになった.今後は,内容把握が容易な短縮法の考案,効率的な視聴のための複数のマルチメディアによる同時再生,動画サイト内にあるマルチメディアを利用した検索システム,検索キーワードに応じた動画ダイジェストの生成,そして,実用化のための処理時間の短縮について検討する.