題名 | 無線電波測位手法における障害物を考慮した電波マップの構築 |
著者 | *桑原 雅明 (立命館大学大学院 理工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学 情報理工学部) |
Page | pp. 738 - 745 |
Keyword | 位置情報システム, 位置推定 |
題名 | 私的空間を対象とするカメラを用いた屋内位置推定システムの提案 |
著者 | *西山 智 (KDDI研究所/東京大学), 岩本 健嗣 (KDDI研究所), 越塚 登, 坂村 健 (東京大学) |
Page | pp. 746 - 754 |
Keyword | 位置検出, 屋内空間, カメラ |
Abstract | 近年、ユーザの状況(コンテキスト)に応じたサービスをユーザに提供するコンテキスト依存サービスの研究が盛んに進められている。特に、ユーザの位置情報は、利用したいサービスや端末などに関するユーザの意図が推定可能する、あるいはより直接的にナビゲーションサービスなどでの初期位置に使えるなど、重要なコンテキストと考えられる。屋外においてはGPS(Global Positioning System)を用いて比較的高精度な位置情報が取得可能である。しかしながら、GPSの利用できない屋内では、超音波を利用するもの、無線LANの電界強度を利用するものなどこれまでいろいろな位置取得方式が検討されてきたが決定的なものは報告されていない。 筆者らは、その利用形態から屋内空間を公共空間と私的空間に分類する。すなわち不特定多数のユーザが利用する駅の構内や商業施設、地下街などは公共空間であり、一方オフィスや住宅は原則としてそこで働く従業員や住人のみが利用するため、私的空間と考えた。公共空間ではそこを利用する全ての人を位置推定システムに予め登録することは難しいため、予めの登録の必要が無い位置推定方式が必要である。一方、私的空間ではそこを通常利用する人は決まっており、位置推定システムに予めユーザ登録を行うことが可能である。さらに、住居等での利用を考えると、ユーザが何らかの端末装置を常に携帯することをシステム要件とすることは望ましくない。また来客や不法侵入者等に端末を持つことを強制することは難しい。また設置あるいは運用のコストが低いことが必要となる。 そこで、筆者らは、これらの要件を考慮して環境側に設置したセンサーのみで屋内位置推定を行うシステムを設計した。本稿ではその設計概要および一部の評価について報告する。 提案するシステムの要件は次の2つである: ・ 比較的低コストで設置可能であること、 ・ ユーザに何も装置を持たせないこと。 これらの要件を満たすため以下の設計とした: ・ 比較的安価なカメラをセンサーとして使用し、カメラ画像の差分抽出により動物体を検出する。カメラ一台が撮影できる範囲は限りがあるため、複数台のカメラを用いることができ、さらに魚眼カメラや斜め方向に設置したカメラも使用できるようにする。 具体的には、各カメラの画像から差分抽出ソフトウェアによって動物体の重心を抽出する。この軌跡はオクルージョンやユーザの動きが止まった場合に急激に移動したり、あるいは交差や消滅したりする。このノイズの多い軌跡を接続する処理も組み込む。 また、全てのカメラが魚眼カメラではなく鉛直方向にむけて配列されている場合と、魚眼カメラも含む複数カメラが任意の方向に設置されている場合の両方をサポートすることとし、前者は単一カメラ内で位置がわかるためカメラ間の軌跡の接続処理を、後者は各カメラでの物体の撮像位置から物体の方向ベクトルを検出し、そのベクトル間の交差により位置を求めるため、複数カメラによる位置推定理を実装する。 ・ 単なる動物体の軌跡ではユーザを識別できないため、予め各ユーザの行動パターンを学習しておき、検出した動物体の動きからそれがどの登録ユーザ(あるいは登録ユーザ以外の誰か)であるか推定する。具体的には、軌跡を短い区間ごとにシンボル化しそのシンボルの並びからHMM(隠れマルコフモデル)等によりユーザを推定する。 この設計に基づき実験システムを構築し、カメラを実際のオフィスに設置した。本稿では、第一段階としてカメラからの動物体の軌跡検出精度についても報告する。 |
題名 | カメラとモーションセンサを用いた公共空間における位置取得システム |
著者 | *岩本 健嗣, 西山 智 (株式会社KDDI研究所) |
Page | pp. 755 - 760 |
Keyword | 位置取得システム, モーションセンサ, 公共空間, 屋内位置 |
Abstract | 近年,屋外では,GPSを用いて位置取得を行う方式が一般的に利用されており,携帯電話におけるナビゲーションサービスなどが実現されている. しかし,屋内では,GPSが利用できないため,こうしたサービスを利用することができない. そのため,屋内においてもユーザの位置を取得するための様々な研究がおこなわれている. 例えば,超音波タグを利用する方法や,RF-IDによる手法,無線LAN基地局を利用する手法などが提案されている. 本稿では,屋内環境として公共空間をターゲットとする位置取得システムを構築することを目的とする. 本稿における公共空間とは,ショッピングモールや,駅といった不特定多数のユーザが一時的に訪れる場所と定義する. 公共空間では,どのようなユーザが利用するかは特定できず,ユーザが特定機器を所持していること想定することもできない. また,ユーザが公共空間の管理者を完全に信用できるとも限らない. そのため,公共空間における位置取得システムの備えるべき要件は,家庭やオフィスなどの特定ユーザのみを対象としたシステムとは異なる. 超音波タグや,RF-IDを用いる手法では,環境に設置された位置取得システムを用いて,ユーザの位置管理を行う. そのため,環境がユーザの識別を行うため,その識別子を一元管理する必要がある. この方式はオフィスなどの利用者が限られる空間では,このような手法は有効であるが,公共空間のように,不特定多数のユーザが利用する環境での利用は現実的ではない. 例えば,大型商業施設で利用する場合,入口や受け付けなどで,来場した顧客のID発行やIDと携帯電話との紐付けなどが必要となり,煩雑な作業となる. また,ユーザの位置をシステム側でトラッキングするため,プライバシが大きな問題になり,ユーザが利用する際の心理的障壁になると考えられる. また,機器を環境側に設置するため,そのコストも問題となる. 無線LANなどを用いて,端末側のみで自位置を測位する手法もあるが,精度が粗かったり,事前の測定が必要であるといった問題がある. そこで,本稿では,カメラを用いた動物体検出と,携帯端末上のモーションセンサ情報を組み合わせることで, ユーザ各々の携帯端末で自身の位置を取得する手法,ALTIを考案した. カメラは,公共空間では防犯目的などに設置されることが多くなっており,また,モーションセンサーは,低コスト化,小型化されており,携帯電話などに搭載されるようになってきている. ALTIでは,まず,設置されたカメラで環境に存在する不特定ユーザを撮影し,画像認識技術を用いてその移動軌跡を記録する. この軌跡データを,その環境にいる全てのユーザの携帯端末に無線LANを用いて逐次送信する. 携帯端末側では,モーションセンサーを用いて,ユーザの動き情報を時系列で記録しておく. 具体的には直進歩行,停止,右左折の動き情報を識別し,記録する. 携帯端末は,カメラより受信した軌跡情報と,自身のモーションセンサから得られた動き情報を比較し,複数の軌跡から自分自身を特定する. この際,軌跡の形状と,動きの時系列を比較し,もっとも近い軌跡を自身と特定する. ALTIでは,同じ空間にいる複数の携帯端末が全員の軌跡情報を受けとることができるが,各々は自身の動き情報のみしか 得られないため,他人の位置を知ることはできない. また,この軌跡データだけでは,個人を特定することはできないため,環境側では特定ユーザの位置を管理することはできない. そのため,環境がID管理や個人識別を行うことなく,携帯端末側でプライバシに考慮した位置取得を行なうことができる. また,環境のカメラと携帯端末上のモーションセンサによって実現することで,低コスト化を実現でき,商業施設などの実空間での 位置取得システムの設置を促し,位置依存サービスの普及に役立てることが可能となる. 本稿では,ALTIの設計と実装,ならびに評価について述べる. |
題名 | 携帯電話における加速度・地磁気センサを用いた位置取得システム |
著者 | *上坂 大輔, 岩本 健嗣, 村松 茂樹, 西山 智 (株式会社KDDI研究所) |
Page | pp. 761 - 767 |
Keyword | 位置取得システム, 加速度センサ, 地磁気センサ |
Abstract | 近年,位置取得システムによって,ユーザの状況に合せた適切なサービスを提供したり,ヒューマンナビゲーションなどの位置情報を直接利用するサービスなどが可能になっている.例えば,屋外ではGPSを利用したナビゲーションや,プッシュ型広告などが実際に利用されている.しかし,これらのサービスはGPS衛星からの電波の届かない屋内では使用することが出来ない.そのため,屋内でも位置取得システムを提供するために,これまでに超音波を用いたものや無線LANを用いたものなどが提案されているが,コストや精度の点で普及には至っていない.特に,屋内では特定の機器を新たに設置する必要があったり,専用のセンサをユーザが保持する必要があるなどの制約がある手法も多い. 一方,環境に設置する設備を必要としない位置取得方法として,慣性航法(自律航法)が知られている.この手法では,ユーザの保持する機器に搭載された,加速度センサ,ジャイロスコープ,地磁気センサなどを用いて,移動距離と方向を求めることで,基準点からの相対的な位置の変位を求めることが出来る.またこれらのセンサは比較的安価であり,小型化も容易なことから,実際に携帯電話などに搭載されるケースも増えてきている. しかし,慣性航法システムを人間の位置取得に応用することを考えると,センサ保持方法に制約が生じる.具体的には,腰などの人体の比較的安定した箇所に装着することが必要となる. 本研究では,携帯電話などの,日常で利用する機器で利用可能な位置取得システムを実現することを目的とする.そのため,手持ちやポケットへの収納など,様々な方法で機器が保持される可能性がある.このような状況では,一般的な慣性航法の手法では誤差が大きくなり,自位置を特定することは困難である.そのため,本稿ではまず,ユーザが機器を手に持った状態において,加速度センサ,地磁気センサを用いて自位置を推定する手法を提案する. 本手法では,まず,加速度センサから歩数を求め,歩数より移動距離を推定する. 一般的に,加速度センサを用いて歩数を求める場合,加速度センサから得られる加速度の大きさを合成し,その変化を閾値によって捉え,歩数を計測する.腰など比較的安定した場所にセンサを装着した場合,歩数とほぼ等しい周期で加速度が変化するため,閾値による検出で正確な歩数計測が可能である. しかし,加速度センサを手に持って歩行した場合,手を振る周期と歩行そのものの2種類の周期を持つ波形が重なることで,閾値による検出では検出漏れがおこり,歩数を正確に計測することができない. そのため,検出漏れが起こる際に観測できる特徴的な波の形状を捉え,検出漏れを減少させる手法を考案した. 次に,進行方向を求める手法について述べる. 静止時においては,加速度センサは鉛直下向きの重力加速度を,地磁気センサは偏角・伏角を伴った北方向を示しており,両者から端末の姿勢を一意に決めることができる.そのため,ユーザに対する端末の姿勢(すなわち端末の保持状態)が固定的であるという制約下では,ユーザの向きを特定することは比較的容易である. しかし,端末を手に保持し歩行した場合では,遠心力や運動加速度などの重力とは異なる向きの成分を含んだ合成加速度が検出されるため,重力方向がわからず,従って正しい端末の姿勢を求めることができない.また,手持ちされる端末の姿勢を固定しない場合,端末姿勢とユーザ姿勢の相対的な関係が不明であるため,端末姿勢が与えられたとしても,進行方向を判断することは出来ない. 本手法では,腕振り運動中の重力方向・北方向の検出方法,及び,加速度ベクトルが形成する平面から端末保持姿勢に依存しない進行方向を求める方法を考案し,両者からユーザの歩行方向を求める. 歩行者の腕が最下点に到達した瞬間,加速度の大きさは極大となり,その方向は重力及びそれと同一方向の遠心力の和にほぼ等しい.これを利用することで,手持ち運動中の重力方向及び北方向を推定することができる.また,腕振り運動の回転面が進行方向と重力方向の双方に平行な平面であると仮定することで,腕振り運動により加速度ベクトルが形成する平面から,端末姿勢に依存せず進行方向を推定することができる.面の前方・後方は,合成加速度の大きさの非対称性から判断可能である. 重力と北方向からなる面と加速度面のなす角がすなわちユーザの歩行方向である. 本手法では,上述したように移動距離として歩数,進行方向として腕振り運動の面を利用することで,ユーザの自位置を相対的に求めることができる.本手法によって携帯電話のように様々な保持方法が考えられる機器でも,搭載された加速度,地磁気センサのみで,相対的な位置を取得することが可能となる. |