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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 3H  トラフィック解析(IOT)
日時: 2008年7月9日(水) 17:20 - 19:30
部屋: ビューホール(1)
座長: 安東 孝二 (東京大学)

3H-1 (時間: 17:20 - 17:45)
題名ネットワークトラフィックの異常検出過程における分析の効率化手法の提案
著者*佐藤 彰洋 (東北大学大学院 情報科学研究科), 長尾 真宏 (東北大学大学院 報科学研究科), 小出 和秀 (東北大学電気通信研究所), 木下 哲男 (東北大学サイバーサイエンスセンター), 白鳥 則郎 (東北大学電気通信研究所)
Pagepp. 698 - 704
Keywordネットワーク管理, トラフィック分析, ネットワークイベント

3H-2 (時間: 17:45 - 18:10)
題名並列データマイニング実行時のIP-SAN統合型PCクラスタのネットワーク特性解析
著者*原 明日香 (お茶の水女子大学), 神坂 紀久子 (NICT), 山口 実靖 (工学院大学), 小口 正人 (お茶の水女子大学)
Pagepp. 705 - 714
KeywordIP-SAN, iSCSI, 並列分散処理, PCクラスタ, データマイニング
Abstract近年、発達する情報化社会では、データの蓄積と運用が非常に重要になってきている。また、情報システムにおいて処理されるデータ量が膨大になってきている。ユーザにとって重要なデータが蓄積されているにも関わらず、使いこなせていない場合が少なくない。そこでデータマイニングの中で、膨大なデータから有益な規則や関係を抽出する相関関係抽出に注目した。相関関係抽出のためのアルゴリズムとして代表的なものに、頻出アイテムセットから候補アイテムセットを生成し、繰り返し数え上げを行っていくAprioriアルゴリズムと、巨大なトランザクションデータベースから相関関係抽出に必要な情報をコンパクトに圧縮したデータ構造であるFP-treeを利用することで候補パターンを生成せずに頻出パターンを抽出するFP-growthアルゴリズムというものがある。パラメータの条件によっては相関関係抽出における計算量、データ処理量は非常に多くなるため、並列化が不可欠となる。分散メモリ型並列計算機の各ノードに汎用のパーソナルコンピュータとネットワークを用いたPCクラスタと、増大する情報量を蓄積するための技術として登場したSAN(Storage Area Network)を併せて用いることで、大量の情報を高速に処理することを目指した。通常SANを用いたPCクラスタではノード間通信を行うフロントエンドはLAN,ストレージアクセスを行うバックエンドはSANでネットワーク接続されている。これに対し我々は、ネットワーク構築コストと管理コストの削減を目指し、フロントエンドとバックエンドのネットワークを同じIPネットワークに統合したIP-SAN統合型PCクラスタの実現を考え、構築した。PCクラスタ上で2つのアルゴリズムを実行するためにはそれらのアルゴリズムを並列化しなければならない。PCクラスタ上の環境でマイニング処理を実行する並列相関関係抽出の研究は多数行われている。その中でAprioriをベースとした並列相関関係抽出のアルゴリズムはいくつか提案されているが、本研究ではハッシュ関数を使用してAprioriを並列化するHPA(Hash Partitioned Apriori)を用い、FP-growthの並列相関関係抽出アルゴリズムはHPAを元に行われた既存研究で提案されたPFP(Parallelized FP-growth)を用いる。これまで使用してきたクラスタにおいては、ネットワークに比べてローカルストレージの帯域幅が低いため、IP-SAN統合型PCクラスタの性能が低下しないということが分かった。そこで、我々は以前より高性能なストレージ(SATAディスクとRAID0構成のSASディスク)を導入したIP-SAN統合型PCクラスタを新たに構築し、HPAアルゴリズムとPFPアルゴリズムをそれぞれローカルデバイスを用いたPCクラスタおよびIP-SAN統合型PCクラスタ上で実行し、実行時間を測定し、そのときのネットワークトラフィック、CPU使用率、メモリ使用率などのモニタを行った。その結果、HPAにおいてはどのクラスタも実行時間はほとんど変わらず、PFPにおいては基本性能測定で格段に性能が良かったSASディスクを用いたPCクラスタの実行時間が一番遅いことがわかった。また、ネットワークトラフィックのモニタリングから、どちらのアルゴリズムにおいてもどのクラスタもネットワークの帯域にはまだ余裕があり、iSCSIを用いた場合も、iSCSIのトラフィックはネットアークにはあまり大きな影響を与えていないことが分かり、IP-SAN統合型PCクラスタは有効であることが分かった。そこで、本研究では、initiatorとtargetの接続台数を変化させるなどして、これまでよりよりネットワークに高負荷をかけたときの、IP-SAN統合型PCクラスタの振舞を観察し、解析を行っていく。

3H-3 (時間: 18:10 - 18:35)
題名大規模データを扱うエンジニアリングアプリケーション向けの高速なASPシステムの構築
著者*亀山 裕亮, 佐藤 裕一 (富士通研究所)
Pagepp. 715 - 722
KeywordASPサービス
Abstract近年、高速なインターネット回線が安価に利用できるようになったことに伴い、 データセンタのサーバ上に置かれたアプリケーションをインターネット経由で 利用し、アプリケーションを利用した分だけ課金されるという枠組みを提供する ASPサービスが注目されている。 ASPサービスを導入することで、利用する人数の分だけコンピュータを準備する 場合と比べて、コンピュータの購入費用だけではなく、ソフトウェアの導入費用、 サポート費用、運用管理などの総運用コストを下げることが可能である。また セキュリティの面でも、業務データが複数のコンピュータに分散していると、 データの入ったPCを紛失したり盗難に会う確率が高く、情報漏洩のリスクが非常に 高くなってしまうが、ASPサービスではサーバ側ではデータを一括管理するため そのリスクを下げることができる。 現在ASPサービスで主に提供されているサービスとしては、文書の編集や、Eメール 送受信、Webサイトの閲覧などといったオフィスアプリケーションが多いが、 これを特にCADやCAEなどといったエンジニアリングアプリケーションに適用した 場合には扱うデータの規模の違いから発生する問題がある。 そこで本発表ではエンジニアリングアプリケーションをASPサービス化した場合の 問題点とその解決方法について発表を行なう。 まずASPサービスでは基本的にはサーバがアプリケーションを実行し、その結果 となる画面だけをユーザサイドのクライアントに転送している。画面の転送方法 としては、画像そのものを送る方式、ベクトルデータに変換して送る方式、描画の ためのコマンドだけを送り処理はクライアント側で行なう方式などがあるが、 エンジニアリングアプリケーションには動作環境がUNIXであるものも多く、 Xプロトコルとよばれる転送方式がそのまま利用されている。Xプロトコルでは図形の 描画やウィンドウの生成などをコマンドとしてサーバからクライアントに送信して いる。この時、例えば縦横のサイズが数万グリッドを越えるようなLSIの配線設計 であっても、実際に画面に表示されるサイズは1600×1200ピクセル程度であり 重なって表示されない部分が多いが、それらもすべて描画コマンドとして送られて しまう。そこで我々はアプリケーションから送られてくる描画情報を一旦サーバ上で キャッシュし、画像データに変換して直接転送することで転送データ量の削減を 行った。転送データ量の削減率は設計データの種類や規模に依存するが、4万本の 配線データが存在するLSIの設計において、従来のXプロトコルのまま転送する場合と 比較して50%のデータ量削減を実現した。 また一般的なASPシステムではデータ転送のプロトコルにTCPを用いている。TCP 通信ではRTT(Round Trip Time)が大きな回線では十分な速度を出すことができない。 これは、送信側は受信側からの応答(ACK)が届かないまま送信できるデータ量が ウィンドウサイズで制限されていることや、ACKが届かないことでパケットの消失を 検知し、 消失した所から再送を行う構造上の理由が原因である。そこでACKを用い ないUDPでパケットを連続的に送付し、パケットの消失を FEC(Forward Error Correction)で修復することにより, 高速データ転送を実現する ため、我々は簡単な計算と少ないメモリ量で高速に符号化・復号化ができるFECで あるRPS(Random Parity Stream)符号を開発した。RPS符号では転送データを いくつかのブロックに分割し、要素が0と1からだけなる符号化行列に従って特定の ブロック間で排他的論理和をとったものをデータとして転送する。受信側で転送 データを復元する際にはガウス消去法を用いた復号法により元の転送データを 復元することができる。この手法では符号化と復元に用いられる演算が排他的 論理和のみであるため、非常に高速できるという点が特徴である。従来のTCPによる 転送と比較してUDPとRPS符号を用いることで、RTTが200msの環境では2倍の高速化を 実現した。 今回開発したASPシステムは社内適用を開始しており、今後は他の業務システム のASP化についても検討を行なっていく予定である。

3H-4 (時間: 18:35 - 19:00)
題名遠隔医療用TV会議システムにおける重畳フレーム番号の識別率評価
著者*平山 宏人 (岡山大学大学院自然科学研究科), 岡山 聖彦, 山井 成良 (岡山大学総合情報基盤センター), 岡本 卓爾 (岡山理科大学工学部), 秦 正治 (岡山大学大学院自然科学研究科), 岡田 宏基 (岡山大学病院総合患者支援センター)
Pagepp. 723 - 728
Keyword遠隔医療, TV会議システム, 高品質静止画, フレーム番号, 識別子
Abstract 近年,少子高齢化社会や農村部の過疎化が急速に進み,特に過疎地域では高齢者の人口に占める割合が人口密集地域に比して著しく高い状態になっている.これに対して,高度な医療設備を有している医療機関は人口密集地域に集中しており,また患者もより高度な医療を求めてこのような病院に集中する傾向が続いていることら,地域の医療格差がより広がる結果となっている.すなわち,過疎地域では高度な医療を必要とする患者の割合が高いにもかかわらず,十分な医療を受けることが困難になってきている.  このような状況への対策として,TV会議アプリケーションを利用した遠隔医療が注目を集めている.特に最近では,一般家庭へのブロードバド回線の普及により,過疎地域においてもインターネットへのアクスが可能となってきており,医療の地域間格差を解消するものとして期待されている.しかし,インターネットはベストエフォート型のネットワークであり,利用可能帯域などの品質が保証されないことから,既存のTV会議アプリケーションで送受信される動画像の品質を高品質なものにするのは難しく,またネットワーク障害によって,画質の劣化,フレームレートの低下,転送遅延時間の増大といった問題が発生することもある.以上のような理由から,既存のTV会議アプリケーションのままでは診療に用いることはできない.  この問題に対して,我々の研究チームでは,TV会議アプリケーションの動画像を撮影部位の確認に使用し,医師が所望するタイミングで,診断に耐えうる高品質な静止画 (以下,高品質静止画という)を取得するシステムを開発している.本システムでは,患者側のカメラから入力された動画像を1 フレームずつ高品質静止画として一定期間保存すると共に,動画像にフレーム番号画像をリアルタイムに合成してからTV会議アプリケーションに入力する.そして,TV会議アプリケーションはこれを低品質な動画像に変換しつつ医師側に送信する.一方,医師側端末のTV会議アプリケーションにはフレーム番号画像が重畳された動画像が表示されるが,医師はこの動画像と音声通話機能を併用して撮影部位を確認しながら,所望のタイミングで動画像のスナップショットを取得する.スナップショット画像を解析するとフレーム番号が得られるので,これを患者側端末に要求し,対応する高品質静止画を得て表示する.TV会議アプリケーションの動画像に重畳されたフレーム番号画像を用いて高品質静止画を特定することにより,ネットワークの伝送遅延やTV会議アプリケーションで発生する遅延が変動しても,医師が取得したスナップショットに対応する高品質静止画を得ることが可能となっている.  本システムでは,フレーム番号は2進数として表現され,各ビットをブロック画像の列として配置することによりノイズ耐性を高めているが,パケットロスや遅延の増大など,ネットワーク状態の著しい悪化によって動画像にノイズが混入した場合や,ブロック画像の色情報が変化・消失することや,配置が崩れるなどの問題が起こる場合に,フレーム番号が正しく転送されず,本来の番号とは異なった解析結果となる(以下,誤認識という)可能性がある.TV会議アプリケーションで用いられるMPEGベースの動画像圧縮方式では,画像圧縮の単位となるブロックは横方向のスライスとしてまとめられるなど,ブロック画像列の配置方向やフレーム上の配置位置により識別率は変化することが考えられるが,ネットワーク状態の変化がフレーム番号の識別率に与える影響は,これまで検討されていなかった.  そこで本研究では,フレーム番号のブロック画像列の配置方法が,識別率に与える影響を評価する.具体的には,本システムを構成する医師側および患者側端末の間にネットワークエミュレータを導入してネットワークのパラメータ,すなわち,帯域・遅延時間・パケットロス率を指定できるようにする.そして,ブロック画像列の符号化方法および配置方法それぞれについて患者側から医師側にTV会議アプリケーションの動画像を送信し,医師側でフレームごとにブロック画像列を解析することにより,それぞれの場合におけるフレーム番号の誤認率を比較検討する.実験パラメータのうち,ブロック画像列の符号化方法について行った予備実験では,グレイコードの使用により通常のバイナリコードよりも誤認率が約35%改善されることが判明している.

3H-5 (時間: 19:00 - 19:25)
題名大規模無線環境へ拡張可能な通信品質検知フレームワークの提案
著者*妙中 雄三, 樫原 茂, 門林 雄基, 山口 英 (奈良先端科学技術大学院大学)
Pagepp. 729 - 737
Keyword無線計測, 通信可能エリア検知
Abstract将来の無線ネットワークはいつでもどこでも接続でき、通信が途切れない環境であることが望まれる。実際にこのような将来の無線ネットワークを実現するにはいくつかの問題が存在する。将来の無線ネットワークは大規模で安定した通信品質が求められるが、構築・管理の大部分が技術者によって行われているため、無縁エリア全域での品質管理の困難や大規模環境への拡張性の欠如が問題となる。また、実環境では、無線エリアの様々な場所で空間的・時間的に無線干渉や反射、拡散等の様々な影響が発生するため、それらの影響による通信品質変動の問題がある。そこで、本研究では、将来の無線ネットワークを実現するための基礎となる新たな無線計測基盤を提案する。提案手法では、技術者の関与を軽減し、無線エリア全域を継続的にかつ詳細に無線計測を実現する。そして、シミュレーションによる実験を通して、提案手法の精度と有効性を評価する。