題名 | サービスアクセスに連動したトンネルネットワークの自動構築 |
著者 | *榎堀 優, 中野 悦史 (立命館大学大学院理工学研究科), 藤原 茂雄, 田中 宏一 (株式会社内田洋行), 岩崎 陽平, 河口 信夫 (名古屋大学大学院工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学情報理工学部) |
Page | pp. 177 - 184 |
Keyword | 仮想ネットワーク制御, スマート環境, トンネリング |
Abstract | ユビキタスコンピューティングでは,部屋などに設置したデバイス群の連携でユーザをサポートするスマート環境が提唱されており,これらの相互連携により高度なサービスが提供されると期待されている.多くのスマート環境は区切られたネットワーク内に構築されており,各種VPN やSSH ポートフォワードなどを行うことが多い.しかし,これらは固定通信路の事前確保や,意識的にサービス利用とは別の手順を行う必要があった.これに対し我々は,サービスアクセス時に発生するDNS クエリをトリガとして自動的な通信経路の確保するPeerPool を提案してきた.しかしながら,PeerPoolは特定形式のホスト名を要求するため,サービスやユーザが注意を払いつつ利用する必要や,連携時や設定時の動作に,ユーザらが日常的に行っている動作から乖離が見られた.この問題に対し,既存ソフトウェアを統御してスマート環境間の連携をサポートするNUE を用いることで解決を行った.プロトタイプのNUE はSkype を用いて実装されており,OpenVPN ベースで構築したPeerPoolとの連携によりサービスアクセスに連動したトンネルネットワークの自動構築を可能とした. |
題名 | RESTに基づく異種スマート環境間のセキュアな連携基盤 |
著者 | *岩崎 陽平 (名古屋大学大学院 工学研究科), 榎堀 優 (立命館大学大学院 理工学研究科), 藤原 茂雄, 田中 宏一 (株式会社 内田洋行), 西尾 信彦 (立命館大学 情報理工学部), 河口 信夫 (名古屋大学大学院 工学研究科) |
Page | pp. 185 - 194 |
Keyword | REST, Webサービス, スマート環境, ユビキタスコンピューティング, アクセス制御 |
Abstract | 生活環境に様々なセンサや機器を埋め込み,スマート環境を構築する試みが多数なされているが,一般にスマート環境はその環境の中だけで閉じていることが多く,異なる組織により構築されたスマート環境(異種スマート環境)間で,機器やサービス間の連携を行うのは困難であった.本稿では,異種スマート環境間の連携のための要件を示し,それを満たすフレームワークを提案する.本フレームワークでは,シンプルかつ汎用的な枠組みを実現するために,各スマート環境の機器をRESTに基づくWebサービスとして公開する.また,ゲストユーザに対してもスケーラブルできめ細かな権限管理を実現するために,ユーザ管理が不要なアクセス権限管理手法として,チケット認証方式を提案する.これは,イベント等で利用される紙のチケットから着想を得たものであり,ユーザが持つデジタル署名されたチケットのデータのみで,サービスの利用権限を判断する.本稿で提案した枠組みを用いれば,異種スマート環境間の連携を,シンプル・汎用的・セキュア・スケーラブルに実現できる. |
題名 | 通信コストと計測精度を考慮したトラッキングのためのセンサモデルの提案 |
著者 | *中里 彦俊, 中村 善行 (早稲田大学), 鄭 顕志 (早稲田大学/国立情報学研究所), 深澤 良彰 (早稲田大学), 本位田 真一 (国立情報学研究所/東京大学) |
Page | pp. 195 - 204 |
Keyword | トラッキング, RSSI, センシング範囲 |
Abstract | 本論文では,無線センサネットワークにおけるトラッキングの計測精度と通信コストのトレードオフを調整する方法を提案する.無線センサネットワークを使用したアプリケーションに,移動する対象を追跡するトラッキングがある.トラッキングを用いることで,外部からの要求に応じて指定された対象を追跡する事ができる.トラッキングを行う際に,追跡できた対象の位置に関する正確さを示す計測精度は,外部の要求に応じて異なる.また,センサはバッテリ駆動であり,電力資源に制限がある為,トラッキングをする際に消費する電力量は,少なく抑えなければならない.消費電力量を抑える方法の一つに,通信コストを削減する方法がある.計測精度と通信コストはトレードオフの関係になっており,本論文では,外部から与えられた計測精度を満たしつつ,通信コストが最小になるようにトレードオフ調整をするトラッキングの構築を目標とする. トラッキングにおける対象の位置を推定する方法として電波強度を使用した推定方法が広く用いられている.本論文が対象とするトラッキングでは,複数のセンサが対象から発信された電波を受信し,互いの電波強度を統合する事で対象の位置推定を行う.この電波強度から対象の位置情報に変換するモデルをセンサモデルと呼ぶ.既存のセンサモデルにはレンジセンサモデルとバイナリセンサモデルの2種類がある.レンジセンサモデルは,受信した電波強度から対象までの距離を算出する.一方,バイナリセンサモデルは,受信した電波強度から、センサが電波を受信できる限界範囲であるセンシング範囲内に対象が存在するかどうかを判定する.レンジセンサモデルとバイナリセンサモデルでは計測精度に違いがあり,計測精度を調整する事ができない.従って,外部から要求された計測精度に応じて通信コストを最小に抑える事ができない.そこで,計測精度と通信コストを柔軟に調整するセンサモデルが必要になる. 本論文では,センシング範囲の分割に着目し,計測精度と通信コストを柔軟に調整するn分割モデルを提案する.n分割モデルではセンシング範囲内を,センサを中心とする同心円にn-1等分し、電波強度に応じていずれかの区域に対象の推定位置をマッピングさせる。分割数nを増減させることで、区域の広さを調節し,その結果計測精度を調整する事ができる。また,計測精度と通信コストはトレードオフの関係にある為,nを調整することで,計測精度を調整すると同時に通信コストも調整することができる. n分割モデルにおける分割数nが計測精度と通信コストに与える影響をシミュレーションにより評価した.シミュレーションでは,バイナリセンサモデル,レンジセンサモデル,n分割モデルを用いたトラッキングを行い,nを変更させながら,各センサモデルにおける計測精度と通信コストを比較した.移動軌跡には,異なる数種類の軌跡を準備した.シミュレーションの結果,軌跡の種類に依存せずにn分割モデルにおける分割数nの増加に従い,計測精度が向上し,同時に通信コストも高くなった.この事から,n分割モデルのnを変更することで,計測精度と通信コストを柔軟に調整できる事が示された. 本論文では,トラッキングにおける計測精度と通信コストを柔軟に調整する為に,センサの計測した電波強度に複数の閾値を設定し,電波強度に応じてセンサのセンシング範囲内を分割するn 分割モデルを提案した.分割数n を変更させる事で,トラッキング精度と通信コストのトレードオフを取れる事をシミュレーションにより示した.nを適切な値に設定する事で,外部の要求する計測精度を満たしつつ,通信コストを最小に抑えることができる. |
題名 | センサネットワークにおけるプライバシー保護とサービス提供を実現するセンサ制御方式の検討 |
著者 | *一枚田 隆史, 中川 紘志, 加藤 弘一, 勅使河原 可海 (創価大学大学院) |
Page | pp. 205 - 213 |
Keyword | センサネットワーク, 最適化問題, プライバシー, ユビキタス |
Abstract | 1. 研究の背景と目的 近年,ユビキタス社会の実現に向けて様々な研究や開発が進められている.このユビキタス社会を実現するための技術の一つとして,センサネットワーク技術に注目が集まっている.この技術により,性能や使用用途が異なる多種多様なセンサノードや電子タグリーダが自動的に周囲の人やモノの状況,または空間の温度や湿度といった環境情報などを取得し,それらの情報を基に日常の生活や業務に対して,空間利用者の行動や状況に応じた有益なサービス提供が可能になると考えられる. センサネットワーク技術の普及に付随する問題として,ユーザのプライバシー問題が挙げられる.現状のセンサネットワーク空間では,個人を特定できるような個人情報やユーザのプライバシーを侵害する情報が無意識のうちにセンサノードによって取得されてしまい,ノード間やネットワーク上でやり取りされることが考えられる.従って,ユーザはセンサネットワークを安心して利用することができなくなってしまう恐れがある.一方,センサノードによって取得する情報を制限してしまうと,サービスを提供できない可能性がある.以上の点から,センサネットワーク空間では,ユーザのプライバシー保護とサービス提供の両立を図ることが重要となる. そのような問題に対して本研究室では,センサネットワーク空間利用の際にユーザの要望を抽出し定義する方式について検討が行われている.これにより,ユーザが利用したいサービスや提供を許容する/しない情報等が決定される.これを受け,本研究ではこれまで,ユーザの要望を実際のセンサネットワーク空間に反映させることを目的とし,決定されたユーザの要望をセンサネットワークに反映させるためのセンサ制御方式について検討してきた.しかし,実際にセンサを適切に制御するためには,ユーザ,センサ,サービスの状況を考慮して最適なセンサを選択する必要がある.そこで本稿では,状況に応じた最適なセンサの組み合わせ決定方式について検討を行う. 2. 本研究のアプローチと課題 情報取得やサービス利用に関するユーザの要望をセンサネットワーク空間に反映させるためには,空間に存在する多様なセンサノードを制御する必要がある.具体的な方法として,ユーザが提供を許容する/しない情報を取得するそれぞれのセンサノードに対して命令を出し,取得動作を制御する方法がある. このセンサ制御の実現のためには,制御すべきセンサを決定する必要がある.しかし,空間を利用するユーザは複数存在し、各ユーザの要望は異なると考えられるため,空間を利用する全ユーザの要望を満たす情報取得とサービス提供の実現は非常に困難である.また,空間を利用するユーザの数や位置が変化すると,使用すべきセンサも変化する。 同時に,情報取得に関するセンサノードの性能の違いも考慮に入れなければならない。センサの種類や性能により,情報を取得可能な物理的範囲は異なる.さらに,センサノードの性能の違いにより,サービスを実行する上で必要なコンテキスト情報の精度に差が生じ,サービスの品質に影響を与える.例えば,「人が来た」というコンテキスト情報と「Aさんが来た」というコンテキスト情報では情報としての精度が異なり,提供可能なサービスの品質も異なってくる. 以上から,ユーザが望むサービス提供と品質を実現するためには,センサネットワーク空間における様々な情報を考慮し,最適な使用センサノードの組み合わせを決定しなければならない。 3. 使用する最適なセンサの組み合わせの選択 本稿では,まず最適なセンサの組み合わせを決定する際に考慮しなければならない要素を整理する.例えば,ユーザが提供を許容する/しない情報,利用したいサービス,センサの性能や取得情報の精度,ユーザとセンサの位置関係,各サービスを実行するために必要なセンサ情報やコンテキスト情報などが挙げられる. そして,ユーザの要望を実現するための最適なセンサの組み合わせの決定のための定式化を行う.このために,まず考慮すべき要素を定量化する.そして,満たすべきユーザの要望や考慮すべき条件を制約条件とし,全ユーザのサービス品質を最大化するなど適切な目的関数を設定することで,センサ選択に関する離散最適化問題として定式化を行う.この最適化問題を解くことによって,全てのユーザの要望を考慮した,最適なセンサノードの組み合わせが決定できる. |