(セッション表へ)

マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 1C  モバイルネットワーク(MBL)
日時: 2008年7月9日(水) 13:40 - 15:20
部屋: シリウス
座長: 太田 賢 (NTTドコモ)

1C-1 (時間: 13:40 - 14:05)
題名無線LANにおける最適なアクセスポイント選択手法
著者*平田 千浩 (電気通信大学大学院電気通信学研究科 ), 渡辺 浩文, 大島 勝志 (株式会社インターエナジー), 鈴木 健二 (電気通信大学大学院電気通信学研究科)
Pagepp. 66 - 72
KeywordWiFi, アクセスポイント, 接続先自動選択, 接続環境予測, モニタリング

1C-2 (時間: 14:05 - 14:30)
題名赤外線通信を用いた高速列車通信におけるハンドオーバ処理の提案
著者*山下 泰弘 (慶應義塾大学大学院理工学研究科), 寺岡 文男 (慶應義塾大学理工学情報工学科)
Pagepp. 73 - 80
Keywordモビリティ, ハンドオーバ, 赤外線通信, 新幹線
Abstract 近年,ラップトップを所持して外出する人が増えており,それに伴って新幹線でのインターネットサービスの需要も高まっている.乗客が移動を意識せずにインターネットサービスを利用するためには新幹線全体をモバイルネットワークにする必要がある.しかし,モバイルルータ(MR)は乗客にある程度の帯域を割り当てるために地上側アクセスルータ(AR)と高速で通信しなくてはならない.よって,地上ネットワークと高速通信するための装置として赤外線通信装置を用いる必要がある.この赤外線通信装置は新幹線側と地上側に設置され,移動に伴って新幹線内の車上赤外線通信装置が地上赤外線通信装置を切り替えることで通信を継続することができる.ただし,MRは車上赤外線通信装置を介して地上ネットワークとの通信を継続するためにモビリティプロトコルを利用する必要がある.しかし,動画ストリーミング配信やインターネット会議のようなリアルタイム通信を実現するためには,新幹線の移動によって起こるハンドオーバによる通信切断時間が通信品質に致命的な影響を与えてしまう.したがって,MRはハンドオーバの際の通信切断時間を削減し,効率のいい通信を行う必要があり,そのためには地上側のネットワーク設計と新幹線内のMRのハンドオーバ処理が必要となる.その際,実際に運用することを考慮し,地上側のネットワーク機器に変更を加えないことが望まれる.  そこで本研究では,地上と新幹線との通信のために赤外線通信装置を用いた際における運用可能な地上側ネットワークの設計と新幹線側ハンドオーバ処理について提案を行った.まず地上側ネットワークの設計を提案するため,ハンドオーバの種類について考慮する必要がある.このハンドオーバの種類にはサブネット内ハンドオーバとサブネット間ハンドオーバの2種類がありそれぞれ行う処理が異なる.サブネット内ハンドオーバは車上赤外線通信装置が同じARに接続された地上赤外線通信装置に接続を切り替えることをいう.その際,MRはネットワークプレフィックスが変化がないためネットワークの観点からみると移動していない.したがって,地上赤外線通信装置の切り替え(L2ハンドオーバという)のみで通信再開することができる.また,サブネット間ハンドオーバは車上赤外線通信装置が異なるARに接続された地上赤外線通信装置に切り替えることをいう.その際,MRはネットワークプレフィックスが変化しておりネットワークの観点からみても移動している.そのため,MRは通信を継続するためにL2ハンドオーバに加え,新たなIPアドレスとデフォルト経路の設定を行い位置管理サーバに位置を登録する(L3ハンドオーバという)必要がある.このようにサブネット間ハンドオーバではL2ハンドオーバに加えL3ハンドオーバを行わなければならないため付加的な遅延が生じてしまう.したがって,効率のいい通信を行うためにサブネット間ハンドオーバをなるべく減らすようなネットワーク設計を行う必要がある.そこで,本提案では地上側ネットワーク設計として,ARを駅に2台設置し駅間の半分を1台のARが担当するようにする.これによって,サブネット間ハンドオーバの頻度を減らすことができる.また,MRはサブネット間ハンドオーバの際に生じる付加的な遅延を削減するために高速ハンドオーバを行う必要がある.そこで本研究では,車上赤外線通信装置が地上赤外線通信装置と光軸を合わせて通信の継続を行うために利用する赤外線通信装置のミラー制御装置からの制御情報を利用することによる高速ハンドオーバを提案する.それによって,MRはL2ハンドオーバの完了を検知し,速やかにハンドオーバ処理を実行できる.MRは,L2ハンドオーバの検知後,pingプログラムでも利用されるICMPパケットを利用してハンドオーバ後の接続ARの情報を取得しサブネット内ハンドオーバかサブネット間ハンドオーバかの判別を行う.サブネット内ハンドオーバの場合,MRはこれ以上処理を行う必要はなく通信が再開する.一方,サブネット間ハンドオーバの場合,MRは先ほどのICMPパケットの始点アドレスと自身が保持するARリストを参照して速やかにL3ハンドオーバ処理を行う.  本研究では本提案の評価を行うためにFreeBSD 6.2-RELEASE上に高速ハンドオーバデーモンとミラー制御デーモンを実装した.この高速ハンドオーバデーモンはミラー制御デーモンからのミラー制御情報を利用して高速ハンドオーバ処理を行うものである.  また,評価ではまずサブネット間ハンドオーバの際のMRの通信切断時間を測定した.その結果,L2ハンドオーバを10 msecと想定した場合の切断時間は20 msec程度であることがわかった.また,無線環境エミュレータを用いて地上ネットワークをエミュレートし平均パケットロス率を測定した.その結果,通信ノードとMR間のRTT (Round Trip Time)が40msの場合でも1%未満であることがわかった.

1C-3 (時間: 14:30 - 14:55)
題名リンク特性の変化に対するアプリケーションの追従挙動の検討およびリンク特性通知機構の提案
著者*岩本 聡史, 石橋 賢一, 森島 直人, 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学)
Pagepp. 81 - 89
Keywordネットワークアプリケーション, アプリケーションプロトコル, 移動体通信, 適応
Abstractインターネットが社会に浸透するのに伴い、ネットワークを利用してサービスを提供する様々なアプリケーションが開発されてきた。アプリケーションが提供するサービスは増加の一途を辿っており、World Wide Webによる情報閲覧や電子メールなどのメッセージサービス、ファイル転送やファイル共有など情報創作物の授受といった従来型のサービスから、近年ではIP電話やテレビ会議のように音声や映像など連続メディアの実時間配信まで多種多様である。このようなアプリケーションの性能は動作する通信環境に大きく依存する。アプリケーションは与えられた通信資源の中で、よりよいユーザエクスペリエンスの提供を目指している。従来の固定通信ではリンク特性(帯域幅、遅延、ジッタ、エラー率など)がほとんど変化せず、利用可能な通信資源は安定しているため、アプリケーションは動作開始時のリンク特性に基づく動作によって最適なユーザエクスペリエンスを提供してきた。しかし、インターネットへの接続形態も当初の想定を超えて多様化しており、無線を利用した柔軟な通信環境が増加してきた。これによりアプリケーションの利用環境にもが変化が生じている。有線インタフェースに比べ不安定である無線インタフェースによる接続形態や、移動通信のようにハンドオーバやインタフェースの切り替えが生じる接続形態では、通信中にリンク特性が突然にして著しく変化する。この影響により、アプリケーションが性能を十分に発揮できなかったり、サービスの提供に支障をきたしたりと、ユーザエクスペリエンスの低下が招かれる。多くのアプリケーションでは下位層におけるこのような変化を想定せずに設計されているため、変化に追従できないのが原因である。 このようなアプリケーションの通信性能低下を防ぐ方法としては、下位層でのリンク特性の変化を防ぐ方法と、アプリケーションの挙動を下位層の変化に追従させる方法が考えられるが、エンドノードにおいてL2レベルの変化を防ぐのは困難である。そこで本研究では、リンク特性の変化にアプリケーションの挙動を追従させることにより、ユーザの要求を最大限に満たすことを目的とする。しかし、アプリケーションがどのように挙動を変化させるかは、個々のアプリケーションによって異なるため、すべてのアプリケーションに対し、個々に追従挙動を実装するのは困難である。そこで、本研究ではアプリケーションの追従挙動を提案することで、今後のアプリケーション設計時における指標を示すものとする。アプリケーションの追従挙動を考える際に問題となるのがアプリケーションの数である。通信資源に対する要求はアプリケーションごとに異なるため、本来はすべてのアプリケーションに対して追従挙動を定義するべきであるが、現実的ではない。そこで、リンク特性の変化に対するアプリケーションの挙動の変化をモデル化し、2つの評価軸を定義する。評価軸を用いてアプリケーションが提供する本質的なサービスを必要最小限のカテゴリに分類する。これにより、それぞれのカテゴリに対して追従挙動を定義することが可能となる。また、追従挙動を実現させる場合、アプリケーションは下位層の変化を認知をする必要があるが、現在のシステムでは標準的な手段が存在せず困難である。そのためアプリケーションが独自に下位層の変化を取得するためのシステムを持つ必要があり、アプリケーションの作成コストが高くなる。そこで、下位層から上位層への情報伝達システムであるリンク特性通知機構を実装する。これはアプリケーションや変化する特性に関わらず汎用的なものとして設計する。