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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 6H  ナビゲーション(ITS)
日時: 2007年7月5日(木) 14:30 - 15:45
部屋: 回転スカイラウンジ
座長: 小花 貞夫 (ATR)

6H-1 (時間: 14:30 - 14:55)
題名歩行者の空間認知に適応した動的な案内地図作成
著者*北 望, 高木 健士 (慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻), 井上 智雄 (筑波大学大学院図書館情報メディア研究科), 重野 寛, 岡田 謙一 (慶應義塾大学理工学部)
Pagepp. 1259 - 1266
KeywordITS, 歩行者ITS, 地図作成, モデル化
Abstract歩行者ITS では歩行者の移動を支援するため,デフォルメ地図の作成や経路選択方法など歩行者にとって分かり易い地図を作成するための研究が様々な面から行われてきた.しかし既存の研究では地図の見易さ・分かりやすさは考慮されているが,実際の歩行者の環境までは考慮されていない.歩行者は地図を見て移動するが,歩行者をとりまく実際の環境は時間や天気,周囲の状況によって動的に変化していくため,地図の見易さだけでなく,実際の歩行者環境を考慮した上での案内地図作成が重要である.歩行者は移動を行う時に,自身の内に認知地図を構成することで空間を把握するが,この際ランドマークが自身の位置と地図上の位置を対応付ける上で重要な役割を果たすと考えられている.しかしランドマークは提示方法や経路を決定する要素の一つとしてしか利用されず,実際に歩行者がランドマークをどのように捉えているのかについては研究がされてこなかった.人の空間認知は認知心理学の分野で古くから研究が行われてきており,距離感や方向感などの人が持つ感覚に関する研究は,都市計画や建築物に応用されてきた.これら都市空間や建築物は,人が移動経路を決定する際に影響を与える直接的な原因であるため,近年の歩行者ITS の分野でも人の空間認知を利用して移動を支援するようになっている.例えば,パスやランドマークといった構成要素を地図上に表示すべきか,強調や省略をどのように行うか,という空間認知の視点を通じて,人の視点に近い移動支援を行うことができると考えられる. そこで本研究ではランドマークの視認性に着目し,歩行者自身から見て目立つランドマークの条件を定量化することで,歩行者の移動を迷いなく間違いなく行える案内地図の作成を提案する.現在案内地図で用いられているランドマークは案内地図の作成者が選択しているが,ランドマークの視認性を定量化することで,作成者の主観に依らず,歩行者にとって分かり易い案内地図の作成が可能となる.本研究ではランドマークの視認性を構成する要素として種類別条件,視対象条件,環境条件の3つに着目する.種類別条件とは,地図上に表示されるランドマークとして人が認知しやすいランドマークの種類を定量化したものであり,視対象条件とは視対象の大きさ,特に歩行者から見た建物の幅といった物理的条件である.さらに環境条件とは,照明,採光,空間の大きさ,形状,内装などの空間における光の状態を決定する物理的要因であり,本研究ではランドマークが存在する道路の幅と時間による明暗の変化で決定する. これら3つの条件についてそれぞれ予備実験を行い,サンプルモデル作成のための指標を導出する.さらに導出した指標を用いてサンプルモデルを作成し,このモデルを用いることでランドマークの視認性を考慮した案内地図を作成する. 本研究ではカーナビゲーションなどでよく用いられるDijkstra 法による最短経路ではなく,視認性の高いランドマークを経由する経路を選択するランドマークルーティングアルゴリズムを利用する.本アルゴリズムを用いることで,視認性の高いランドマークを経由する経路を選択できる.ここで,歩行者の周囲の環境によってランドマークの視認性は変化するため,選択される経路も動的に変化していく.そのため,歩行者が置かれた実際の環境に適した地図を提供することが可能となる.評価実験では,本研究で作成したランドマーク定量化のサンプルモデルと,それによって作成された案内地図の評価を行った.実験方法として,Dijkstra 法で決定した経路と提案手法によって決定した経路のそれぞれにおいて,経路長,判断時間,誤り回数を計測した.ここで経路長は昼用の地図と夜用の地図上でそれぞれ測った実測値で,判断時間と誤り回数は,映像を見ながら仮想的に移動してもらった時に間違えた回数であり、夜と昼それぞれで実験した。実験結果から,本提案手法を利用した場合に経路長は長くなるが,判断時間,誤り回数共に低減され,ランドマークの視認性を取り入れた案内地図の有効性が示された.

6H-2 (時間: 14:55 - 15:20)
題名建築・空間デジタルアーカイブスを用いた実空間上の建築散歩支援システムの設計と実装
著者*遠山 緑生, 大久保 成 (慶應義塾大学DMC機構), 加藤 貴之, 南 政樹 (慶應義塾大学政策・メディア研究科), 村井 純 (慶應義塾大学環境情報学部)
Pagepp. 1267 - 1274
Keyword位置情報, GPS, デジタルアーカイブス, 歩行者ナビゲーション, コンテクストアウェアネス
Abstract本論文は,都心部における建築・空間に関する資料のデジタルアーカイブスを利用した,建築散歩支援システムについて提案し,設計と実装について述べる.このシステムは,利用者のコンテキストに基づいて,デジタルアーカイブス上の資料を提示し,利用者の実空間行動を支援するものである. 建築や都市空間については,有意義で資料的価値が高い資料が存在していても,一般利用者が楽しめるような形では提供されていないことがある.本論文では,携帯電話やPCのWebブラウザを用いて,利用者がこのような資料を楽しむことができるシステムの設計と実装について述べる.特に,携帯電話を用いることで,その建築に向き合った現場で,「今この目の前」にある建築や地域について,その成り立ちの資料や過去の写真を閲覧できるシステムを提案する.

6H-3 (時間: 15:20 - 15:45)
題名研究・教育を支援する位置情報提供サービスの構築と運用
著者*波多野 敏明 (慶應義塾大学 環境情報学部), 奥村 祐介 (慶應義塾大学 政策・メディア研究科), 佐藤 龍 (慶應義塾大学 環境情報学部), 小原 泰弘 (慶應義塾大学 政策・メディア研究科), 加藤 文俊 (慶應義塾大学 環境情報学部), 南 政樹 (慶應義塾大学 政策・メディア研究科)
Pagepp. 1275 - 1280
Keyword位置情報システム, コンテクストアウェアネス, RFID, 応用・社会システム
Abstract本論文は,慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下慶應SFC)の情報インフラストラクチャとして構築された、位置情報提供サービスについて報告する。この位置情報提供システムは、人やモノの位置情報を活用した研究,教育活動を支援する目的で、2005年10月から設計・実装と運用を行っている。 人やモノが実空間上のどの辺りに存在しているかを示す位置情報は,ユビキタス・コンピューティングをはじめとした様々な分野で利用されている.また,研究に限らず,実空間指向のアプリケーションを教育や実際のサービスとして実現するためにも位置情報は必要である.そこで,様々な活動を支援する基盤して位置情報を提供するシステムが必要であると考え,キャンパス全域をカバーする位置情報共有システムを構築した. その結果,利用者は位置情報提供サービスから得られる位置情報を利用して「出欠確認システム」「客観的事実にのみ基づくブログ」「キャンパスマッチングサービス」などのアプリケーションを作成し公開した.また,あらかじめ同意した教員が,自身の位置情報をパブリックドメインの共有財として公開し,それを可視化し公開することで,学生とのコミュニケーションが誘発されるなど,位置情報の新たな可能性を見いだすことができた.