題名 | 神戸イルミネプロジェクト:LEDを使ったブレイクダンスパフォーマンス |
著者 | *牧 成一, 藤本 実 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻), 花岡 邦俊, 沖野 将司, 池田 朋大, 岡田 量太 (神戸大学大学院/自然科学研究科電気電子工学専攻), 細見 心一 (大阪大学大学院/情報科学研究科・マルチメディア工学専攻), 中田 眞城子 (えぬぷらす), 塚本 昌彦 (神戸大学/工学部電気電子工学科) |
Page | pp. 1207 - 1214 |
Keyword | ウェアラブルコンピューティング, ダンス, LED, 加速度センサ, 電飾ファッション |
Abstract | 本稿では,2006年の神戸ルミナリエでイルミネーションブレイクダンスを披露したイルミネプロジェクトと,制作したシステムについて述べる.イルミネプロジェクトとは,LEDをはじめとするウェアラブルファッションという新しい産業・文化を神戸から立ち上げることを目的とし,神戸大学塚本研究室と神戸ベンチャー研究会が協力し2005年に立ち上げたプロジェクトである.
近年,コンピュータや半導体,センサなどの小型化により,ユビキタスコンピューティング環境が実現しつつある.このような環境では,アクセサリや服などにLEDを埋め込むことが可能となり,これらの作品は様々な展示会やファッションショーなでで披露され注目を集めている.これまで,筆者らの研究グループでは,LED同士の高度な連携を実現するユビキタスデバイスの可能性に着目し研究活動を行ってきた.そして,2005年にイルミネプロジェクトを立ち上げ,制作したシステムを利用したパフォーマンスや機能説明を行ってきた.2005年には,ルミナリエ期間中にルミナリエ会場の南にある噴水広場前公園にて,ジャケット,帽子,ストラップ,マフラーにLEDとセンサと取り付けた作品を披露した.2006年の夏には,神戸摩耶山にてウェディングドレス,タキシード,十字架,風船などにLEDを取り付けたウェディングセレモニーのデモンストレーションを行った.そして,2006年のルミナリエ期間中には,昨年と同様の場所で,ダンスズボンシステム,加速度センサをつけたLEDバー,LEDマトリックスを制作し,ブレイクダンスのパフォーマンスを披露した.
ダンスズボンシステムは,プログラムで制御されたLEDがバックミュージックやブレイクダンスの動きとタイミングを同期させて多彩なパターンで明滅する.これによって装着者は,自らのパフォーマンスに光という新たな要素を加えることができ,さらに自由な表現が可能となる.今回のダンスズボンシステムでは,1着あたりフルカラーLEDを16個用いており,これらのLEDの明滅パターンをマイクロコントローラで制御する.マイクロコントローラを利用することで,明滅パターンをシナリオ通りに再生することが可能となる.LEDの明滅を制御するプログラムは,1ms単位での調整を行いバックミュージックとの正確なタイミングの同期を実現した.ブレイクダンスでは装着者が激しく動き回るため,ダンスズボンシステムのハードウェアは衝撃や振動への耐久性と,装着者の動きをできるだけ阻害しないことが求められる.そこで,設計の段階からハードウェアにさまざまな衝撃対策を講じた上で,LEDへの配線の引き回しと固定方法にも衝撃を吸収する工夫を施した.また,センサやスイッチ等といった外部からの入力を増やすと,ダンス中の衝撃により装着者の意図しないタイミングでLEDが動作する危険性が高まる.そのため,今回のダンスズボンシステムでは,LEDを点灯させる制御のほとんどをソフト側で行い,外部からの入力をダンス開始時のスイッチのみとした.
加速度センサを用いたLEDバーは,縦に16個のLEDを並べ,装着者の手の動きに反応して文字やイラストを表示させる.今回は5パターンのコンテンツをスイッチで切り替えて表示した.LEDマトリックスは,8×16個のLEDを用いており,ダンサーの胸に付けてアニメーションを表示させた.LEDバーとLEDマトリックスにおけるコンテンツ制作のために,PC上で専用の開発環境を作成した.この開発環境では,マウスを利用しエディタ上で絵や文字を書くことで,フリーハンドでコンテンツを制作することを可能とする.LEDマトリックスは,basicインタプリタを搭載しており,文字をプログラミングで表示させることを可能とする.
パフォーマンスは5人のダンサーによって2006年12月10日と17日の2回に渡って行われた.3人がダンスズボンシステムを装着し,2人は手にLEDバーを胸にLEDマトリックスを装着し,パフォーマンスを行った.ダンスズボンシステムを装着したダンサーは,動きやすさを生かしてアクロバティックなダンスを披露した.脚の動きを大きく見せる振り付けにすることで,LEDの残像を効果的に利用したパフォーマンスを披露することができた.また,LEDバーとLEDマトリックスを装着したダンサは,メッセージやイラストを表示し,ダンスの手の振りとの連携を行った. |
題名 | ウェアラブルコンピューティングのための2つの加速度センサを用いたポインティング方式 |
著者 | *所 洋平 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻), 村松 邦彦 (神戸大学大学院/自然科学研究科電気電子工学専攻), 細見 心一 (大阪大学大学院/情報科学研究科・マルチメディア工学専攻), 塚本 昌彦 (神戸大学/工学部電気電子工学科) |
Page | pp. 1215 - 1222 |
Keyword | ポインティング, ウェアラブルコンピューティング, 加速度センサ, ハンズフリー, 入力デバイス |
Abstract | 近年,計算機の小型化,軽量化に伴い,ノートPC,PDAなどの計算機をユーザが常に身につけ利用するウェアラブルコンピューティングに対する注目が高まっている.一方,通常のデスクトップコンピューティング環境では,GUIが多く利用されるようになり,コンピュータを利用する際にはポインティングデバイスが必要不可欠である.すなわち、計算機を使用する際にはアイコンやボタンなどに対して,マウスなどのポインティングデバイスを用いて操作をおこなうことが一般的である.また,携帯情報端末などでは,文字入力やメニュー選択などにおいても、ポインティングを用いておこなう方法が実用化されている.ウェアラブルコンピューティング環境では、実世界における荷物を持つ,片手で他の装置を操作するような作業をしながら従来型のアプリケーションを利用することを考慮する必要があり、ハンズフリーで,操作の簡単なポインティングができるデバイスが求められている.既存のポインティングデバイスとして,トラックボールや視線入力があるが、しかし,トラックボールは手に持って操作する必要があり両手でなんらかの作業をしながらの使用が困難である.一方,視線入力は,カメラなどの機器が必要になり,作業に支障をきたす可能性がある.また,視線入力は,操作の自由度が低く,使いにくいという問題がある.そこで,本研究では,簡単かつ直観的な操作での入力とハンズフリー性の両方を満たすことを目的とした,2つの小型加速度センサによるポインティング方式を提案し,評価実験を行う.
提案する入力インタフェースでは,ユーザの両手もしくは両肘などに2個の小さな加速度センサを装着する.これにより,加速度センサを両肘に付けた場合は,両手で他の作業をしながらポインティングを行うことが可能となる.対応する表示画面では,画面左下の点と画面右下の点を支点とした2直線を表示させ,それらの2直線の交点にポインタを配置する.この2直線をそれぞれ装着した左右2個の加速度センサに対応させ,加速度センサの値の変化に応じて直線の画面下端からの角度を変化させることでポインタを動かす.加速度センサを取り付けた手先または肘の動きに同期して,画面上の直線が動き,その交点によって表されるポインタを動かすことができる.これにより,単純な動作で動き,直観的なポインティングが可能となる.提案したポインティング方式の有効性を示すため,プロトタイプシステムを用いてポインティング速度に関する評価実験を行った.実験の結果,提案方式は,画面左下右下など画面位置によってはポインティング速度が遅くなることが明らかになった.この問題を解決するために,直線の支点をポインティング画面上から下方に適切量だけ移動することで,問題をほぼ解決すると同時に,ポインティング速度をさらに向上させることが可能となった.また,プロトタイプシステムと既存デバイスとの評価実験を行い,提案方式の有効性について調べた.その結果,ハンズフリー性を実現しながら,手に持つ既存デバイスの一部とほぼ同等のポインティング速度を記録し,2個の加速度センサを用いる方式の有効性を示すことができた.提案方式は,手で他の作業を行いながら利用することが可能なため,さまざまな応用が考えられる.具体的な例として,医療現場での利用が考えられる.歯科医療のように,問診と施術を同時に行う現場では,治療をしながらカルテや施術の記録を入力するために,ハンズフリーで使いやすいポインティング方式が求められる.外科などの手術の場合でも,医師と麻酔技師などの間での情報共有のためにウェアラブルコンピューティングが利用されているが,その際にも本研究で提案する方式は有効であると考えられる.また,工場などで,荷物の運搬作業をしながらの計算機の利用や,重機や他の装置を操作しながらマニュアルを見る際などの利用にも提案方式は有効であると考えられる. |