題名 | Live E!:センサストリーム制御機構および地理位置に基づくオーバレイネットワークを利用したセンサ情報共有基盤の構築 |
著者 | *松浦 知史, 洞井 晋一 (奈良先端科学技術大学院大学), 落合 秀也 (東京大学), 石塚 宏紀 (東京電機大学), 江崎 浩 (東京大学), 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学) |
Page | pp. 1161 - 1167 |
Keyword | センサネットワーク, オーバレイネットワーク, センサストリーム |
Abstract | センサ技術やネットワーク性能の向上により、現在では大量のセンサを設置し、インターネットを通してセンサ情報を共有する事が可能となりつつある。産官学共同のプロジェクトであるLive E!ではセンサ情報を公共の資産と考え、誰でも自由にセンサ情報を利用できる情報基盤の構築に取り組んでいる。現在では主に水害対策や教育現場において利用されており、今後環境問題やビジネスへの応用などが期待されている。
現在Live E!ではクライアント・サーバ型のアーキテクチャを採用し、サービスを提供している。しかし、今後センサの増加を考慮すると負荷分散を考慮したアーキテクチャを構築することは必須である。センサから常時生成されるセンサデータストリームを柔軟に制御できる事ができれば、アーキテクチャの変更を円滑に進める事が可能となる。そのために専用のセンサゲートウェイを作成した。
センサゲートウェイはセンサを管理している団体ごとに設置され、センサデータストリームを受け付ける。センサゲートウェイは各種プラグイン対してデータストリームを受け渡し、各プラグインがデータストリームを制御する仕組みを取っている。例えばローカルのデータベースにセンサデータを蓄積するプラグインや降雨時にメールを送信するプラグインなど様々なプラグインが考えられる。センサゲートウェイにはデフォルトでLive E!ネットワークに対してセンサストリームを送信するプラグインが組み込まれている。このプラグインは専用のサービス解決サーバに対して問い合わせを行った後にそこで提示された宛先へセンサストリームを送信する設計になっている。このような構成をとる事で、サービス解決サーバの中身をアップデートすることで、新規にプラグインを追加・更新する事無しに、センサから生成されるセンサストリームを自在に制御することが可能となっている。
また分散環境を実現するために位置に基づくオーバレイネットワークを構築し、そのオーバレイネットワークにセンサストリームを送信する。温度や湿度などのセンサ情報はその値だけでは価値を持たず、データの生成された位置や時間といった付加情報と共に利用される。位置による範囲検索を実現するために、4分木を用いて地表の2次元平面を表現し、Z-orderingを利用したID生成方法を採用したオーバレイネットワークを提案し、構築する。オーバレイネットワークを構成するノードは動的に割り当てられた特定範囲の地理位置に関する情報を、データの生成時刻をインデックスとしたバイナリツリー状にデータを蓄積する。そのためユーザは特定の場所や時間を指定してオーバレイネットワーク上から情報を取り出すことが可能となる。
オーバレイネットワーク構成するノードを含めLive E!ネットワーク全体ではセンサデータのやり取りなどをWEB-APIを定義し、これを利用することで行っている。これはアーキテクチャを構成するコンポーネント間で疎結合を実現するためである。今回取り組んだシステムアーキテクチャの変更時などに効果を発揮し、システム全体を停止することなく移行作業を行うことが可能である。
本論文では上記で述べたLive E!全体のアーキテクチャとその変更の推移をセンサゲートウェイの仕組みと共に示す。またオーバレイネットワークの構成やアルゴリズムの詳細を述べ、実環境での性能評価も含めて説明する。 |