題名 | 電気特性と赤外線信号を併用した高精度な既存家電の状態推定手法 |
著者 | *栗山 央 (静岡大学創造科学技術大学院), 峰野 博史 (静岡大学情報学部), 古村 高 (株式会社ルネサスソリューションズ), 水野 忠則 (静岡大学情報学部) |
Page | pp. 1003 - 1009 |
Keyword | ホームネットワーク, ホームオートメーション, PLC, UPnP |
Abstract | 我々は通信機能を持たない家電製品(以降,既存家電)を用いてホームネットワークを構築するためのデバイスとしてHATを開発した.HATは既存家電に対してネットワークを介した遠隔監視や遠隔制御を達成する.本論文では,新たに消費電気特性と受信赤外線信号情報を併用した高度な状態推定手法の適用を考える.消費電気特性とは既存家電が消費した電力量,電圧量,電流量の組である. 近年,UPnP (Universal Plug&Play) やECHONETなどホームネットワークに関する標準規格の整備や,DLNA (DigitalLiving Network Alliance) 対応家電などそれらの規格に準拠した家電製品の登場により,一般家庭においてもホームネットワークを構築可能な環境が整いつつある.ホームネットワークを構築することで,ネットワークを介したメディアコンテンツの取得や,ホームオートメーションを達成できる. しかしながら,現在家庭内に存在する家電製品の多くは通信機能を有しておらず(以降,通信機能を持たない家電製品を既存家電,通信機能を持つ家電製品を情報家電と呼ぶ),ユーザはホームネットワークを構築するにあたって,既存家電から情報家電へと買い換える必要がある.情報家電への買い替えはユーザにとって金銭的負担となる.また,全ての家電製品が情報家電化されるとは限らず,情報家電化されなかった家電製品はホームネットワークに参加できない. 我々はこの問題を解決するため,Home Applinace Translator(HAT),及びHAT-Control Point (HAT-CP) と呼ばれるデバイスを開発した.HAT 及びHAT-CP は,安価なコストで既存家電をホームネットワークに参加可能にする.HAT 及びHAT-CPを用いたホームネットワークでは,情報家電の購入や新たな通信インフラの敷設,複雑なネットワーク設定等を必要としない.ユーザはHAT 及びHAT-CP を用いることで,安価かつ容易にホームネットワークを構築でき,既存家電や情報家電など家庭内の全てのデバイスに対してホームオートメーションを達成できる. HAT及びHAT-CPは既存家電の消費電気特性及び受信赤外線信号情報を用いて既存家電の状態推定を行なう.消費電気特性を用いた状態推定に関して単一変量を用いた状態推定の他に,新たに多変量解析を応用した状態推定手法を提案し,これを評価した.また消費電気特性を用いた状態推定結果と受信赤外線信号情報を用いた状態推定結果のどちらを優先すべきかといった問題に対しても解決を図り,その結果を評価した.本論文では,多変量解析を応用した状態推定手法が従来手法より優れていることを示すと共に,消費電気特性と受信赤外線信号情報を併用することで,既存方式よりも高精度に既存家電の状態推定が可能なことを示す. |
題名 | 幼児施設における保護者参加型子ども見守りシステムの活用に関する一考察 |
著者 | *河田 博昭 (NTT), 高野 陽介 (NEC), 岩田 義行, 金丸 直義, 下倉 健一朗 (NTT), 藤田 善弘 (NEC) |
Page | pp. 1010 - 1013 |
Keyword | 子どもの見守り, ロボット, 携帯電話 |
Abstract | 近年の生活スタイルの変化により、核家族化や、両保護者が共に就業する割合が高まっている。この割合は、今後も高くなっていくことが予想されている。この様な背景で、現在の育児は、保護者と保育士との協力が不可欠なものとなる場面が多く見られ、育児支援対策の拡充が求められている。 従来、保護者が子どもを幼児施設へ預けると、幼児施設での保育活動は保育士へすべて委任することとなった。幼児施設での様子は、保育士からの連絡帳や、登降園時の短時間での会話で伝えられるだけであった。そのため、幼児施設からの情報提供に関して、情報通信技術の活用が試みられている。 保護者と保育士との協力をサポートするシステムとして、従来の連絡帳をデジタル化する試みが研究されている。保育士が撮影したデジタル画像を活用しつつ、オンデマンドでの連絡帳配信をインターネット経由で実現している。配信回数の増加による保育士の負担を、データベース化されたテンプレートを用いることで軽減しており、保護者と保育士間における情報共有ツールとして、有効な試みである。遠隔の保護者が子どもの様子を確認することを可能とする試みとして、保育園へWebカメラを設置しインターネット経由で園内の様子を配信する試みが行われている。保護者が子どもの様子を直に確認できることは、子どもの安全や保護者の安心感を向上させる上で有効な試みである。子どもの活動を確認することで、その後の親子間での会話も活性化することが予想される。しかし、子どもの様子を断片的に視聴することにより、保護者の不安を増幅させる可能性がある点などが懸念されている。 安心、安全で、より質の高い育児を実現するためには、保育施設側と子どもとのコミュニケーションやふれ合い方を支援することや、保護者の保育活動への参加を促すことも必要であると考えられている。将来的には保護者と保育士の協力をサポートするだけではなく、保護者と子どもとの係わり合いを支援するシステムが求められると、我々は考える。 一方で、ロボットの高度化が進み、社会的ニーズを満たすレベルに達してきている。ロボットによるチャイルドケアの実験は近年多く実施されており、ロボットの存在が子どもたちに及ぼす効果が研究されている。 今回、我々は、保護者と保育士の協力と保護者と子どもとの係わり合いとを支援するシステムとして、チャイルドケアロボットを活用し、幼児施設におけるケア・知育・遊びに、遠隔に居る保護者がネットワーク経由で関与する方式を提案する。その実現例として、保護者参加型子ども見守りシステム「メルロボ連絡帳」を開発した。情報機器の配置が難しい幼児施設において、チャイルドケアロボットは子どもや保育中の保育士にとって親和性の高いデバイスである。保護者が、ネットワーク経由でチャイルドケアロボットへ希望を伝えられることにより、保護者の希望を、保育士や子どもへスムーズに伝達することが可能になると考える。 保護者参加型子ども見守りシステム「メルロボ連絡帳」では、遠隔地の保護者は携帯電話、ノートPCなどでメールの利用や、Web閲覧を可能とする環境であるとする。幼児施設へパーソナルロボット パペロを、ネットワーク上へパペロと携帯電話を結ぶ「ActionSwitchプラットフォー ム(AcSP)」を配置する。本システムは、NTT、NECが共同実験において開発したものであり、「ActionSwitchプラットフォー ム(AcSP)」はNTTが試作開発し、「パーソナルロボット パペロ」はNECが試作開発したものである。 本システムは、2つの機能、「メルロボ」と「ロボ連絡帳」を提供することを可能としている。以降、この2つの機能に関して紹介する。 メルロボは、保護者からの電子メールの内容に応じて、パペロが見守り動作を行うことで、幼児施設への保護者の参加と、子どもの状況確認とを実現する機能である。メルロボは、子どもの見守り動作一般を意図したアプリケーションであるが、今回の実験では特に、子どもとの遊びをサポートする機能を実現した。 ロボ連絡帳は、AcSP上に蓄積される、パペロのカメラより取得されている画像データを活用することで、保護者と保育士間での情報共有の実現を目的とした機能である。本機能の特徴として、保育士が、画像データの取得タイミングをパペロへ指示することを可能としており、パペロと遊ぶ子どもの意図するシーンをスムーズに共有することが可能となっている。 本報告では,本システムを幼児施設へ持参し,6組の親子に利用してもらった結果に関して報告を行なう.幼児施設における提案システムの活用事例や,保護者や保育士から得たシステムに関する評価に関して報告し,本システムの今後の改良に関して考察を行なう. |
題名 | 自由筆記手書き入力での仮名漢字変換指定と誤認識訂正併用インタフェースの設計 |
著者 | *櫻田 武嗣, 織田 英人, 萩原 洋一, 中川 正樹 (東京農工大学) |
Page | pp. 1014 - 1019 |
Keyword | ペン入力, 日本語変換, インタフェース |
Abstract | 本論文は、漢字入力のための枠なし自由筆記のインタフェースについて述べる。ペン入力PDAの普及や、電子インタラクティブホワイトボードの売り上げの拡大、マイクロソフト社のタブレットPCの出荷などにより、ペンベースのインタフェースは、人々の注目を再び集めている。特に最近は任天堂のNintendo DSが発売され、ペンインタフェースを使ったゲームが人気である。 ペン入力はいくつかの利点がある。大きな場所をとらない点、使うのにトレーニングを要しない点、インタラクティブホワイトボードへのペン入力は聴衆の注意を簡単に引きつけることができる点である。人々はどうやって使うのかを考えることなく、彼ら自信のアイデアを表現したり、注釈をつけたりすることができ、考えは書く動作によって邪魔されることは少ない。 しかし、現在使われている手書き文字入力には問題がある。問題の一つは、手書き認識エンジンが誤認識をしてしまうこと、もう一つの問題は文字の入力枠があって、1文字ずつ入力しなくてはならず、入力しづらいことである。現在の手書き文字認識はユーザが入力したかった文字と認識された文字が違う誤認識が起こる。また、これまでの日本語の手書き文字認識は枠の中に文字を書かせるものであった。枠があることで、文字の区切りが分かり、認識率は向上するが、枠の中に納める必要があり、ユーザに負担をかけるものであった。 他方でユーザ側の問題もある。難しい漢字は読めるが書けないという問題、漢字をど忘れしてしまうという問題である。漢字を書くことができなければ、これまでの手書き文字認識エンジンではその文字を入力することができなかった。 枠なし手書き文字認識により、ユーザは記入枠を気にすることなく、自由に紙とペンを用いたように自然に文字を入力する事が可能である。しかしながら現状ではどうしても誤認識が起こるため、その訂正作業が必要となる。我々はこれまで枠なし手書き文字認識における誤認識を簡便に訂正し、スムーズな文字入力を行えるようにすることを目的とした誤認識訂正インタフェースについて研究を行ってきた。このインタフェースを使うことで、誤認識の訂正は簡単になる。しかし、ユーザが最初に入力したかった文字である保証はない。なぜならば、ユーザが本当は入力したかった文字が書けず、別の文字を入力することがあるからである。特に漢字が書けない場合に、仮名文字で代用することがある。仮名文字から漢字への変換は、キーボード入力の場合、仮名漢字変換を使ってできる。しかしながら、手書き入力ではその方法が無いのが現状である。 我々は以前、NHK(日本放送協会)の番組の実験に協力した。その番組の中で、読める字と正しく書ける字は違うということを確認している。キーボード入力の場合は、前述のように仮名漢字変換を使えば良いが、漢字を詳細に知っておかなければ、手書き文字認識で入力することができない。ユーザが書けると思っている漢字でも実際には書き順が大幅に違っていたり、線や点が足りないため正確な漢字となっていなかったりする。正確でない文字は、文字認識では認識されないので、ユーザは仕方なく仮名で入力をすることになる。 手書き入力で、漢字が分からない場合に、平仮名で記入しておき、後でゆっくりと仮名漢字変換が出来れば便利である。本論文は、枠なし手書き文字認識において、誤認識の訂正と仮名漢字変換場所の指定を併用できるインタフェースの設計について述べる。本論文で述べるインタフェースを実装すれば、枠なし手書き入力環境においても、思考を妨げない自由な筆記が可能となる。 |
題名 | センサー情報を統一的に扱うためのフレームワークの設計と実装 |
著者 | *佐藤 龍, 村井 純 (慶應義塾大学 環境情報学部), 南 政樹 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科) |
Page | pp. 1020 - 1024 |
Keyword | センサネットワーク |
題名 | 模型をつかったRFIDによるユビキタス実験環境モデルの構築 |
著者 | *山田 晴弘, 大西 克実, 中野 秀男 (大阪市立大学大学院創造都市研究科) |
Page | pp. 1025 - 1028 |
Keyword | ユビキタス, RF-ID, 模型, IT特区 |
Abstract | どこでもコンピュータ環境としてユビキタスコンピューティングは、普及への道を進むべく、各所で実証実験が行われているが、ユビキタスコンピューティングは、そもそもの対象が人間そのものに帰結するため、その装置は大型化せざるを得ない。そのため、実験にあたっては実験装置が大掛かりにならざるを得ず、その構築にかかわる期間や経費がネックとなっていることが多い。そのような中では、多伎にわたる実験内容を効率よく行なうことは極めて難しくなっているといえる。本稿は、その欠点を補いかつ、俯瞰的な見地からより効率的な実験を行なう手段として10分の1スケールのモデルルーム実験環境を構築し、その運営ノウハウを公開するものである。 基本実験モジュールとして、運搬可能なトランクの中にRF-IDをキーデバイスとしてサーバー連携を行う実証環境であり、基本機能として大型ディスプレイの制御、ドアセキュリティ、TV電話等が連係動作を目指す。 一般的に、ユビキタスコンピューティングの実証としては、「断片的な実機モデル」を構築するか、コンピューター上の仮想空間にてバーチャルなシミュレーションを行なうかどちらかを選択することになる。 これまでのユビキタス実験は、研究室内にセンサーやワイヤーを張り巡らし仮設の実験環境を構築することがせいぜいであったため、マンション一室をまるごと実験環境とした「ユビキタスホーム実験」はその点では革新的であるが、いかんせんその費用もけた違いであり、再検証なども簡単に行なうことは難しい。 しかし、実験装置は大きくとも、コンピュータやセンサーは技術の進歩により小型化が進められている。コンピュータは高速に、記憶容量はより広大に、各種無線デバイスも小型化が著しく、実験対象と機器の大きさのギャップは開く一方なのが実情である。 一方で、バーチャルなシミュレーションの分野においては、再現できる事象が全てあらかじめプログラム可能な既知の事実になるため、アクシデントといった突発的な事象を把握することは困難である。 このようなミスマッチを解決するには、人間の大きさを小さくすることであり、ユビキタス実証実験環境を効率よく安価に求める手段としてミニュチュアモデルを使うことがふさわしい。 橋梁土木や航空機風洞実験では模型実験は一般的である。現在ではヴァーチャルなコンピュータシミュレーションに取って代わられた感もあるが、モデリング理論が確立するまでは、まだまだ模型が有効であり最終的な追試として模型実験を行うことも多い。 特に、今回はRD-IDを用いたが、使用する電波は免許の不要な微弱無線を使用し、人間を対象とした実験装置では1mの到達距離が必要となる場合も、10分の1スケールであれば100mmで有効となる。また、無線装置は実験である以上、アンテナ形状や位置等を頻繁に累犯に変更する必要も生じるが、この点でも無線免許が不要であることは極めて有利であり、実験の柔軟性を広げることに繋がる。 また、将来的には家やオフィスといった閉じた部屋から、ビルそのもの、まち全体にまでネットワークを拡張していくことが検討されている。そのような中での実証実験は装置の設置・運用また撤去といった作業工程にかかる人的経費は極めて大きい。この分野でも模型を活用した実証実験環境の構築と効率的な実験手法の確立は有用であると考える。いうまでもなく、ユビキタスコンピューティングの世界は、今後ますます大規模になっていく。従来の部屋や家ではなく、ビル丸ごと 街ごと全部など、スケールはさらに大きくなる。すでに、道案内システムや弱視者サポートシステムなどの実証実験が国土交通省の助成等により行なわれている。 それはすなわち、事前調査の費用も爆発的に増加する事を意味している。しかし、ユビキタス社会は人が直に触れることを前提としていれる以上、その検証は極めて慎重に行なわなければならない。一方でその実証実験環境の構築には莫大な費用が予想されるとともに構築期間や、住民周知や広報といった間接費用も大きなウエイトをしめることになる。 今回は10分の1のスケールにて実験を行なったが、今後の展開としては 64分の1や100分の1などの大縮尺模型での実験も想定できる。本稿の実験内容を発展させれば、研究室の一角で ユビキタスビルの検証も行なうことが出来るわけである。 |