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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 5C  センサネットワーク制御2(MBL)
日時: 2007年7月5日(木) 10:20 - 12:30
部屋: 砂子〜磯笛
座長: 神崎 映光 (大阪大学)

5C-1 (時間: 10:20 - 10:45)
題名End-to-Endパケット伝送モデルに基づくリアルタイム性を考慮した可用帯域幅推定方式
著者*祐成 光樹, 小西 勇介, 中尾 敏康 (NEC 共通基盤ソフトウェア研究所)
Pagepp. 939 - 945
Keyword可用帯域幅, 推定, 待ち行列モデル, 無線マルチホップ, 映像ストリーム
Abstract我々は,映像ストリームを無線マルチホップ送信する「モバイル・カメラセンサネットワーク」の研究開発に取り組んでいる.無線マルチホップ経路で利用可能な帯域幅(可用帯域幅)が低下した場合,ネットワーク輻輳が発生し,通信品質劣化(パケットロス増加,遅延/ジッタ増大)を招く.このような劣化を回避するには,輻輳状態を定量的に把握するために,End-to-End経路の可用帯域幅をリアルタイム計測するネットワーク計測技術が重要である.従来方式は,高レートの試験ストリームを経路に送出し,パケット受信間隔に基づき可用帯域幅を推定する.このため,試験ストリームレートが経路の可用帯域幅を超える場合,計測時間が長くなり(低速),輻輳を誘発(高負荷)する問題があった.本稿では,低レートの試験ストリームを用いて高速/低負荷に可用帯域幅を高精度推定する方式を提案する.本方式では,隣接ノード数がポアソン分布に従うよう配置されたノードで構成される経路を想定する.経路ノードの占有帯域幅を,隣接ノード数を用いた線形回帰モデルで定式化し(占有帯域幅モデル),End-to-Endのパケット伝送時間(片道伝送時間)を待ち行列モデルで定式化する(パケット伝送モデル).そして,隣接ノード数,および片道伝送時間を観測し,両モデルから可用帯域幅を推定するアルゴリズムを説明する.評価実験の結果,低レートの試験ストリームを用いた場合でも,可用帯域幅を高精度推定できることを示す.

5C-2 (時間: 10:45 - 11:10)
題名大規模センサネットワークにおけるトラフィック量低減のためのデータ送信制御方式に関する一検討
著者*高岡 真則 (日本電気通信システム), 中尾 敏康 (日本電気)
Pagepp. 946 - 950
Keywordセンサネットワーク
Abstractセンサネットワークが大規模になり膨大なセンサノードからデータが送信されるようになると,データの送信を適切に制御しなければ,系に流れるトラフィック量が膨大になり輻輳状態に陥る可能性がある. 本研究の目的は,大規模なセンサネットワークにおける自律分散的なデータ送信制御方式を開発することである. センサネットワークはアプリケーションに対し,各センサノードからの情報を集約し,または必要な情報の選択や変換を行ったものを観測情報として提供する. たとえトラフィックの低減を行うためにデータ送信頻度を抑制しても,そのような観測情報の正確性や品質が,著しく低下したり劣化したりしないようなデータ送信制御方式である必要がある. 一般に,センサネットワークがアプリケーションに提供する観測情報の正確性(品質)の向上と,系のトラフィック量の低減の間には,トレードオフ関係があり両立は難しい. しかしながら,センサノードが密に配置されていれば,近接するセンサノードが観測するデータ間には,冗長性があると考えられる. そこで,各センサノードが観測データの冗長性を考慮して,無駄を省くようにデータを送信すれば,系のトラフィック量の削減が期待できる. すなわち,トレードオフ関係を超えて,観測情報の正確性向上とトラフィック量低減が両立できると期待できる. 本論文では,トレードオフ関係を調整できるような,自律分散的なデータ送信制御機構を提案する. 具体的には,個々の観測データが,センサネットワークがアプリケーションに提供する観測情報の正確性に対して寄与する度合いに基づく方式とする. すなわち,センサネットワークから最終的に出力される観測情報に対し,どれだけその正確性の向上に貢献するかといった度合いに着目する. このように個々の値が全体集合の正確性へ寄与する度合い応じて送信することにより,冗長的度合いの高いデータの送信が行われなくなり,トレードオフ関係を超えた制御が可能と期待できる. また,本方式では,寄与する度合に基づいて確率的に送信を制御している. これにより,中央集権的なノードから指示されることなく,各センサノードは自律分散的に送信を制御することができる. 本方式の有効性を確認するために,計算機によるシミュレーション実験を行った. 実験の結果,トレードオフ関係にある観測情報の正確性とトラフィック量の調整を行えることがわかった. しかしながら,トレードオフ関係を超えて,センサノードがアプリケーションに提供する観測情報の正確性の向上と,系のトラフィック量の低減を両立するには,非常に密にセンサノードが配置されている条件下でないと実現できないことも分かった. 本論文では,系の平均的なトラフィック量や,観測対象のバースト的変化に対する影響,時間変化に対する追従性等について調べ,大規模センサネットワークの制御可能性についての考察を行う.

5C-3 (時間: 11:10 - 11:35)
題名カメラセンサネットワークにおける地理位置情報ルーティングプロトコルの設計
著者*石塚 宏紀 (東京電機大学大学院 情報メディア専攻 ユビキタスネットワーキング研究室), 戸辺 義人 (東京電機大学 情報メディア学科)
Pagepp. 951 - 956
Keywordセンサネットワーク, アドホックネットワーク, 地理位置情報, カメラセンサ
Abstract 近年,MEMSを基にしたセンサ技術の進歩により低コストで低エネルギー消費のセンサデバイスが開発されてきている.さらに,Webカメラを始めとしたマルチメディアセンサも急速に発展し,実世界で利用され始めている.その中でも,カメラセンサネットワークは現在,都市環境での防犯や災害地での人命救助,異常気象の観測など我々の生活に近い分野で利用されている.カメラセンサネットワークにおいて,ユーザから発信されるクエリは位置情報に大きく起因する可能性が高い.そのため,カメラセンサネットワークは地理位置情報ルーティングによってユーザのクエリを転送することが望ましい.例えば,ビルの警備員は,カメラセンサネットワークを用いて不審者を追跡する際,位置情報を元にクエリを発行することが考えられる.カメラセンサネットワークでは,カメラのセンシング範囲や向きなどをノードが予め,ネットワークに対してフラッディングし,それらの情報を基にルーティングを行う手法も提案されている.しかし,地理位置情報ルーティングは経路構築過程でフラッディング用いないため,通信電力節約できることから,センサネットワークのクエリ転送において大きな注目を集めている.既存の地理位置情報ルーティングはセンサノードが設置してある位置を宛先としてクエリを転送する. しかしながら,カメラのように広いセンシング範囲とセンシングに向きを持つセンサは,カメラが配置してある地点が必ずしもユーザが求めるデータを保持するノードであるとは限らない.そのため,カメラセンサネットワークにおける地理位置情報ルーティングでは,センシング範囲とセンシングの向きを考慮した新しい地理位置情報ルーティング プロトコルを設計する必要がある.そこで,我々はカメラセンサネットワークに適した地理位置情報ルーティングプロトコルとしてSenriGanを提案した.SenriGanは,既存の地理位置情報ルーティングプロトコルであるGPSRを拡張し,カメラが設置された位置に対してではなく,ユーザが必要とするデータの位置に対してクエリを発行し,その位置が撮影しているカメラまでルーティングできるプロトコルである.あるノードのセンシング範囲の情報はその近隣ノード間で共有され,ネクストホップを選出する際に利用される.また,選択した地点を撮影するカメラへ余すことなくクエリを転送するために,ランデブーペリメターフォワーディングを提案した.これによって,ユーザは欲しい画像の位置を指定するだけで,その地点を撮影している複数カメラまでクエリを転送し,画像を得ることができる.  しかしながら,現在のシステムでは,ユーザにはユーザに対してどちらの方向から撮影した画像なのか把握できないデータが転送される可能性がある.アプリケーションのシナリオを考慮すると,ユーザはあらかじめ,どちらの方向から撮影したデータが必要なのかを指定できるほうが望ましい.例えば,警察官が,追跡中の犯人の顔を正面から捉えた画像が必要な場合,ユーザは犯人を前から捉えたデータを指定できなければならない.そこで,我々はSenriGanを改良し,クエリの属性として新たにユーザが取得したいデータの方向を指定し,各センサノードにもユーザの指定する方向とノードが撮影する方向を判定するクエリプロセッシング機構を構築した.また,必ずしも指定された方向に完全一致した画像があるとは限らないので,完全一致しない場合においても,指定された位置を撮影した画像の中からもっとも近しいものを選択し,ユーザに返答するインプリシット レスポンス機能も実装した.  本稿では,提案地理位置情報ルーティングプロトコルSenriGanのシステムアーキテクチャを示し、そのプロトタイプの実装と既存の地理位置情報ルーティングプロトコルであるGPSRとSenriGanのクエリ到達率を示す.評価の結果として,クエリ到達性に関して,GPSRよりもSenriGanのほうがより,高いことが明らかになった.

5C-4 (時間: 11:35 - 12:00)
題名ノードの負荷を考慮した複数シンクセンサネットワークのパケット分配送信方式について
著者*大石 忠央 (静岡大学大学院情報学研究科), 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院インフォマティクス部門)
Pagepp. 957 - 965
Keywordセンサネットワーク, 複数シンク, パケット分配送信
Abstractセンサネットワークの問題の一つに,特定のセンサノードにパケット中継が集中することが挙げられる.このようなノードをボトルネックノードと呼ぶ.一般に,センサネットワークではボトルネックノードがシンク付近に存在し,シンク付近のボトルネックノードの負荷分散のため,複数のシンクをセンサネットワークに導入することが考えられている.しかし,センサノードの分布が一様でない場合では,ボトルネックノードは必ずしもシンク付近ではない.この場合,従来方式では,ボトルネックノードがシンク付近のノードよりも早期にバッテリ枯渇を引き起こし,ネットワークの延長が十分になされない.そこで本稿では,複数のシンクを用いたセンサネットワークにおいて,ボトルネックノードを考慮したネットワーク長寿命化方式DCAM (DispersiveCast of Packets to Avoid bottleneck nodes in using Multiple sinks)を提案する.DCAMではまず,シンクがボトルネックノードを見つけだす.そして,各ノードは見つけ出されたボトルネックノードの負荷を減少させるように,複数のシンクを届け先とする.DCAMの性能を計算機シミュレーションによって評価した結果,DCAMは従来方式であるO-DOP (Optimal DispersiveCast of Packet)送信方式より1.58倍のネットワーク寿命を示した.

5C-5 (時間: 12:00 - 12:25)
題名可動ノードの導入によるセンサネットワークの省電力ルーティング方式の提案
著者*勝間 亮, 村田 佳洋 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学学科 情報処理学専攻 ソフトウェア基礎学講座), 柴田 直樹 (滋賀大学), 安本 慶一, 伊藤 実 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学学科 情報処理学専攻 ソフトウェア基礎学講座)
Pagepp. 966 - 971
Keywordセンサネットワーク, 可動ノード, モバイルセンサ
Abstract近年,広域に設置された多数の小型センサノードが無線通信により相互通信する ことで環境情報の収集やオブジェクトの追跡などを行うワイヤレスセンサネット ワーク(以下,WSNと呼ぶ)およびそのアプリケーションが注目されている.一 般に,センサノードはバッテリー駆動で長期間の動作を要求されるため,計算パ ワーは貧弱であり,また,センシング,通信のための電力も限られていることが 多い.WSNのより長期間の動作を可能にするために,これまで様々な省電力化方 式が提案されている. 本研究では通常用いられる静止ノード(一度配置されるとそれ以降は移動できな いノード)に加え,駆動能力を備えた可動ノード(自力で移動できるノード)を一 部導入し,可動ノードを適切な位置に移動させることで,既存方式より広いセン シングエリアとより長期間のWSNの動作を実現する方法を提案する.可動ノード の導入によって,どのノードからも孤立しており基地局へのパスが分断されてい るような静止ノードに対して,基地局へのネットワークを中継できるように可動 ノードを移動させることや,可動ノード自らが未カバーエリアに移動してセンシ ングをおこなうことで,より広いセンシングエリアを確保できる.また,通信に かかる電力は距離の2乗に比例することが知られており,遠距離を1ホップで通信 しているような箇所に可動ノードを移動させて通信を中継させることで,ネット ワークの省電力化が可能になるとともに,局部的なバッテリーの消耗を防ぐこと も可能である.そして,ノードの故障やバッテリー切れなどの不意の出来事が発 生した際に再計算し,可動ノードを適切に移動させることで,その影響をより少 なくすることが可能である. 可動ノードを用いたWSNは既にいくつか提案されている.例えばWangらは,可動 ノードを用いたセンサの再配置手法を提案しているが,ここでは全てのセンサノ ードが可動ノードであることが前提であるため,本研究よりもセンサノードの配 置におけるコストが高くなる.さらに可動ノードの移動にかかる時間に制限が無 いために定期的にデータ収集をするようなアプリケーションが正常に動作できな い危険性があるという問題点が存在する. 他には,例えばMeiらは部分的に可動ノードを導入し,センサが故障してネットワ ークが分断した場合に修復する手法を提案している.しかしここでは本研究の目 的の1つである広いセンシングエリアの確保については考慮されていない. 提案方式では,センシング領域として障害物のない平面を想定し,領域にばらま かれた各センサノードが周辺の温度や湿度などのデータを周期的に計測し,マ ルチホップ無線通信によりあるノード(基地局ノードと呼ぶ)に集めるアプリケー ションを対象とする.各センサノードのバッテリー量は限られているため,マル チホップ通信により,他のノードが集めたデータの中継に特定のノードが頻繁に 使用されると,バッテリー切れによりデータのセンシングおよび中継が出来なくな り,結果としてセンシング領域が狭まりWSNの稼働時間が短くなってしまうこと が予想される.提案方式では,この問題に対処し,WSNのセンシング領域の広さ と稼働時間の長さをできるだけ保つように可動ノードを適切な位置に移動させる. 上記を実現するため,対象アプリケーションにおいて,各ノードからのデータ計 測間隔(周期),可動ノードの最大移動速度,各センサの座標,各センサの電力 残量を入力とし,各時刻のセンシング領域をWSNの稼働時間で積分した面積を最 大とするような各可動ノードの移動先を出力する問題を定義する.本問題は組み 合わせ最適化問題のため,大規模のWSNでは現実的な時間で最適解を算出するこ とはできない.そのため,センシング領域を格子状に幾つかの部分領域に分け, 可動ノードの移動先は各部分領域中の一点に固定することで,考慮すべき組 合せを減らすというヒューリスティックを導入し,組み合わせ最適化問題の近似 的解法を用いて良い精度の近似解を算出する.また,可動ノードの移動中にネッ トワークが分断して対象アプリケーションの動作を妨げてしまう場合がある.そ のため,各ノードからのデータ計測周期よりも短いタイムスロットに区切り,各 タイムスロットごとにできるだけセンシングエリアを広くできるような可動ノー ドの配置を離散的に計算する.また,時間とともに,センサノードのバッテリー は消費され,さらには,故障するノードも発生する.従って,可動ノードの最適 な位置は時間の経過とともに変わってくる.そのため,提案方式では,周期的に 可動ノードの最適な位置を再計算する. シミュレーション実験により,提案方式が,静止ノードのみのWSNに比べどの程 度有効であるかを評価する.また,静止ノードの数に対し必要な可動ノードの 割合などについても評価を行う.