題名 | NAT-fの移動透過通信への拡張 |
著者 | *鈴木 秀和, 金本 綾子, 渡邊 晃 (名城大学大学院理工学研究科) |
Page | pp. 857 - 865 |
Keyword | 移動透過性, NAT越え, プロトコル |
Abstract | IPv4ネットワークにおいて,グローバルアドレス空間とプライベートアドレス空間の違いを意識せずに,移動透過通信を実現できると有益である.従来のNATを介した移動透過技術は,移動ノードが異なるアドレス空間に移動する前に,ノード間の通信が既に確立していることを前提にしている.しかし,ノード間にNATが介在すると,NAT外部のノードから内部のノードへ通信を開始することができないため,適用範囲が限定されていた.本稿ではこの問題を解決するために,通信開始時にNAT越えを実現するNAT-f(NAT-free protocol)と,移動透過技術であるMobile PPC(Mobile Peer-to-Peer Communication)を融合した拡張NAT-fを提案する.移動ノードとNATは拡張NAT-fにより,移動ノードの移動前後のIPアドレスの関係,およびNATのマッピング関係を共有し,NAT-fとMobile PPCにおけるアドレス変換を同時に行う.インターネット上の移動ノードは,ホームネットワーク内のノードに対して通信を開始することができ,かつ通信中に移動しても通信継続性が保証される. |
題名 | Mobile PPCにおけるパケットロスレスハンドオーバの提案 |
著者 | *金本 綾子, 鈴木 秀和, 渡邊 晃 (名城大学大学院理工学研究科) |
Page | pp. 866 - 872 |
Keyword | インターネット, ハンドオーバ, 移動体 |
Abstract | モバイルコンピューティング環境では,端末が移動してもコネクションを切断することなく通信を継続することが要求されている.しかし,インターネットでは端末が移動するとIPアドレスが変化するため,通信が継続できない.そこで,我々はエンド端末だけで移動透過性を実現できるMobile PPCの研究を行っている.しかしながらMobile PPCだけでは,移動時の通信切断時間や,パケットロスが大きく発生してしまうという課題がある.また,エンド端末が同時に移動した時に通信が切断されないようにするための配慮も必要である.そこで,本研究では,Mobile PPCをターゲットとして上記課題を解決する方法を検討した. |
題名 | 移動透過通信を用いたキャンパス生活支援システム |
著者 | *正岡 元 (広島大学大学院 総合科学研究科), 田島 浩一, 岸場 清悟, 西村 浩二, 相原 玲二 (広島大学 情報メディア教育研究センター), 前田 香織 (広島市立大学大学院 情報科学研究科) |
Page | pp. 873 - 878 |
Keyword | IP Mobility, 位置情報 |
Abstract | 1 はじめに 移動透過通信とは、ノードが移動してもコネクションを維持し たまま継続して通信を行う事をいう。IP層における移動透過性 を実現する方式が複数提案されているが、それらはいずれも通 信を行う移動体が接続するネットワークのIP アドレスから何 らかの位置情報を得ることができる。この、移動透過通信時に 位置情報を得られるシステムを教育利用に応用する手法を提案 する。 2 移動透過通信 2.1 教育における活用 ネットワークの教育利用では、学生や端末の位置などの状況を 講義や実習で利用したい場合がある。位置情報を移動透過通信 に利用するIP アドレスから得る事で、新たな手法や装置を用 意する事無く位置情報を利用するシステムを構築できる。 2.2 移動透過通信アーキテクチャ IP 層における移動透過性を実現するアーキテクチャはMIP6[1]、 LIN6 [2]、MAT[3] など複数提案されている。ここでは移動透 過性を実現するアーキテクチャとしてMAT を採用する。その理 由を以下に述べる。 2.2.1 MAT のアーキテクチャ MAT ではホームアドレス(HoA) とモバイルアドレス(MoA) の対 を IMS と呼ぶサーバで管理する。HoA はノードに固定であり、 MoA は接続するネットワークから動的に割り当てられる。宛て 先HoA に対応するMoA をIMS で調べ、HoA と MoA を変換する 事で、ノードが移動してもHoA を利用して通信を継続すること が可能である。 IMS を用いる事で、ノードの状態によらずHoA とMoA を得られ る。本提案ではMoA から位置情報を得る必要があるため、ノー ドに依存せずIMS のみでMoA を調べられる MAT を採用する。 3 アプリケーション 3.1 基本機能 移動ノードは双方向通信が可能である。移動透過通信により、 移動しても通信の継続が可能である。また、ノードに固定で割 り当てるHoA を学生に一意に対応させる事で、 HoA から個人 を特定できる。また、場所ごとに異なるMoA 用のプレフィック スを割り当てる事で、MoA から場所を特定できる。ここでIMS の登録情報を調べることで、誰がどこにいるか知ることができ る。 さらに移動ノードのMoA とその変化を追うことで、移動ノード の現在位置と過去の軌跡の情報をリアルタイムに得られる。こ の情報を用いる事で、各移動ノードに対して最適な情報を提供 できる。次節以降に具体例を挙げて応用を示す。 3.2 フィールドワーク 例えば測量実習などのフィールドワーク時に、学生は移動端末 を持って実習を行う。教員は講義室の固定端末を用いる。 教員は学生の実習状況を講義室で確認でき、現場を巡回する事 無く全体の状況をリアルタイムに把握することが可能となる。 他方、学生は場所に依存せずに教員にアドバイスを求められる。 その際、現場の状況をリアルタイムに教員へ提供する事で、そ の場で適切なアドバイスを受ける事ができる。 3.3 学内案内 キャンパス内にカメラを設置し、動画をネットワーク配信する。 また大学内を案内するコンシエルジュを置き、移動端末を持つ ユーザに案内を行う。コンシエルジュは移動端末の位置情報を 元に適切な案内を行う。詳細な地図や案内情報などの配信も可 能である。個人向けだけでなく、キャンパス内カメラの情報を 元に天気などの一般的な情報を提供する事もできる。 3.4 食堂や駐車場の混雑状況の提供 食堂及び駐車場にカメラを設置し、動画をネットワーク配信す る。学生は昼休みに食堂に移動しながら動画を視聴し、各食堂 の混雑状況をリアルタイムに確認して最適な食堂を選択する事 が可能である。駐車場も同様に空きのある駐車場をリアルタイ ムに確認し、選択が可能である。またここで移動ノードの位置 情報を利用する事で、混雑していない食堂及び駐車場を案内す る際に移動ノードから近い場所を優先して案内する事ができる。 4 実験ネットワーク 4.1 実験ネットワークの構築 キャンパス内の無線LAN 網を用いて、IPv6 の実験ネットワー クを構築した。既存のアクセスポイント(AP) に実験用の ESS-ID を設定し、実験用のVLAN を経由して大学内IPv6 ネッ トワークに接続する。このIPv6 実験ネットワークはJGN の IPv6 網を経由してインターネットへの接続性を持つ。 AP の場所毎に異なるプレフィックスを割り当てる。MoA はこ のプレフィックスから割り当てる。このプレフィックスと場所 との対応を別に管理し、対応関係を調べることで、MoA から場 所を得る。 4.2 位置情報の利用 IMS の登録情報と、MoA として使われるプレフィックスと場所 との対応情報を利用することで、 MoA を位置情報として利用 する事ができる。移動透過通信の利点と、MoA から得られる位 置情報とを用いて様々なサービスを実現できる。 5 まとめ 移動透過通信において、MAT の持つIMS を用いてHoA とMoA の 対を管理するという特徴を利用する事で、通信をしている個人 とその位置を知ることができる手法を実現した。また、その手 法を用いた教育への応用について提案した。 参考文献 [1] D. Johnson, C. Perkins, and J. Arkko. Mobility Support in IPv6. rfc 3775, IETF, June 2004. [2] Masahiro Ishiyama, Mitsunobu Kunishi, Keisuke Uehara, Hiroshi Esaki, and Fumio Teraoka. Lina: A new approach to mobility support in wide area networks. IEICE Transaction on Communication, Vol. E84-B, No. 8, pp. 2076?2086, 2001. [3] 相原玲二, 藤田貴大, 前田香織, 野村嘉洋. アドレス変換 方式による移動透過性インターネットアーキテクチャ. 情報処 理学会論文誌, Vol. 43, No. 12, pp. 3889?3897, 2002. |
題名 | ローカルネットワーク接続ならびにセキュアな無線LANスポットを考慮したモバイルルータ拡張方式の実装と評価 |
著者 | *田坂 和之, 磯村 学, 井戸上 彰, 堀内 浩規 (株式会社KDDI研究所) |
Page | pp. 879 - 887 |
Keyword | モバイルルータ, ネットワークモビリティ, ITS, mobile IP |
題名 | リンク特性変化追従のためのTCP輻輳制御パラメータ設定タイミングの提案 |
著者 | *石橋 賢一, 森島 直人, 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学) |
Page | pp. 888 - 897 |
Keyword | TCP, 輻輳制御, 移動体通信, Mobile IP, Network Mobility |
Abstract | Mobile IPやNetwork Mobilityといった移動透過性を実現する技術によって、 移動端末からインターネットを利用する際にも、 環境に応じたデータリンクへ、 通信を遮断することなく移行できるようになった。 移動透過性は、 データリンクの切り替え時に起こるIPアドレスの変化を、 上位層から隠蔽することで実現しているが、 データリンク特性の変化までは関知しない。 そのため、 通信経路の特性に輻輳制御を最適化するTCPでは、 データリンク特性の急激な変化に追従することができず、 通信性能の劣化が生じたり、 輻輳を引き起こしたりする。 我々は、 データリンク特性が急激に変化する環境において、 TCPの輻輳制御機構を追従させるための研究に取り組んでいる。 手法の提案に先立ち、 我々はリンク特性の変化に伴う輻輳制御パラメータの挙動を予備実験により詳しく調査した。 予備実験では、 dummynetと呼ばれるリンクエミュレータをもちいて、 PHS相当のデータリンクとIEEE802.11b相当のデータリンクを擬似的に作成した。 このふたつのデータリンクを切り替えながらTCPによる通信をおこない、 TCPの輻輳制御パラメータの遷移を調査した。 その結果、 データリンクを切り替える際に、 輻輳ウィンドウサイズ(cwnd)、 スロースタート閾値(ssthresh)、 再送タイムアウト値(RTO)などの輻輳制御パラメータが適正値から乖離することが明らかとなった。 これらの適正値から乖離した値をもとにセグメントの送信や輻輳制御が実施されると、 不要な輻輳制御が実施されたり、 逆にデータリンクが許容できる以上のセグメントを送出してしまう可能性がある。 輻輳制御パラメータの不整合に起因するさまざまな問題は、 乖離した輻輳制御パラメータを、 データリンクの切り替えに応じて、 適切な値に設定することで解決できると考えられる。 しかし、 データリンクが切り替わった直後に輻輳制御パラメータを再設定しても、 再度パラメータの変化が生じてしまい、 リンク特性の変化に追従できない。 これは、 データリンクの切り替え前後は、 ハンドオーバ処理による一時的な切断や、 セグメントの到着順序の入れ替わり問題、 遅延確認応答などの要因によって、 通信経路が不安定になるためである。 したがって、 パラメータを設定するタイミングを十分に考慮する必要がある。 本研究では、 データリンクの切り替えが発生してから、 上述の問題が発生する期間をリンク移行期間と定義する。 リンク移行期間が終了するまでパラメータの設定を遅延することにより、 データリンク特性の変化に確実に追従できるようにする。 リンク移行期間は、 データリンクの切り替え後に送出したセグメントに対する最初の確認応答を受信したときに終了する。 また、この確認応答を本研究ではWedgeAckと呼ぶことにする。 WedgeAckの受信以降は、 切り替え後のデータリンクのみを利用して通信を行うことが保証される。 リンク移行期間の終了、 すなわちWedgeAckの到着を検知するために、 TCPの制御情報が格納されるトランスミッション制御ブロックに新たな変数tsmaxを導入する。 tsmaxはデータリンクの切り替え時に、 それまで送信したセグメントのシーケンス番号に1を加えた値を保持する。 そして、 確認応答を受信するたびに、確認応答の値(Ack)とtsmaxを比較する。 確認応答の値がtsmaxよりもおお聞ければその確認応答をWedgeAckと判断し、 リンク移行期間の終了とみなす。 逆に確認応答の値がtsmax以下の場合は、 WedgeAckとは判断せずに、リンク移行期間を継続する。 この条件に加えて、 さらに遅延確認応答の影響を排除するための制約を設けた、 WedgeAckの検出条件を式(1)に示す。 (tsmax < Ack) && (tsmax <= snd_una) (1) ここで、snd_unaは確認応答を受信していないシーケンス番号の最大値である。 式(1)を満たす最初の確認応答をWedgeAckと判断し、 リンク移行期間を終了すると共に、 パラメータの設定を行う。 本研究では、 上記のリンク移行期間の効果を確かめるために、 NetBSD上のTCPを改変し、 エミュレーション環境での評価を行った。 その結果、 リンク移行期間を設けなかった場合では、 設定したパラメータが活用されない事例が多数発生したのに対し、 リンク移行期間を設けた場合は、 設定したパラメータをもちいた通信を実現できていることが確かめられた。 |