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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 2E  ユビキタス情報処理1(UBI)
日時: 2007年7月4日(水) 15:00 - 16:40
部屋: 鶴・亀
座長: 西尾 信彦 (立命館大学)

2E-1 (時間: 15:00 - 15:25)
題名物体の相対的な位置関係に基づいた実世界のイベント検知手法
著者*柳沢 豊, 前川 卓也, 岡留 剛 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
Pagepp. 322 - 329
Keywordユビキタスコンピューティング, イベント検出, センサネットワーク, 接触
Abstract近年,実世界に埋め込まれた多数のセンサノードから集めたデータを使って,さまざまなサービスを提供しようとする研究が進んでいる.代表的なサービスとしては,コンテキストアウェアサービス,ロケーションアウェアサービスがある.これらのサービスでは,ユーザや実世界の物の状態や位置に応じて,ユーザに提供するサービスの内容を動的に変える.どのようなサービスを提供するかは,センサで取得したさまざまな実世界のデータを処理して決める.中でも,ユーザや物体の物理的な位置をあらわすデータは,サービスの内容や質を決定する上で重要なデータである.位置データの使われ方は,主に次の2つに分類できる. 1. サービスの内容を決定するために,物体やユーザの位置を(判断材料として)利用する.例えば「本を持ったユーザが机に近づくと,スポットライトが点灯する」というようなサービスはこれにあたる. 2. サービスの方法として,物体や他ユーザの位置をユーザに提示する.例えば「ユーザが置き忘れたサイフの場所を提示する」というサービスはこれにあたる. いずれのサービスを提供する場合にも,「位置」または「位置の変化」を人間の理解できる形で表現することが必要である.本稿では,この「位置」に関するイベントを記述するよりよい方法について議論する. 従来のシステムでは,物体の位置データは通常 のような組で表現された,絶対的な座標点データとして管理している.これは,絶対的な位置が取れれば,あらゆるサービスに使えるという考えに基づいている.しかし,物体の位置を検索するときや,物体の位置に関する条件を記述するときに,絶対位置を用いることは実際にはほとんどない.例えば「部屋の <120, 300, 40> の位置に本がある」のような記述は人間には分かりにくいが,「部屋の中の机の上に本がある」というように,物体との相対的な位置関係を使った記述は分かりやすい.検索を行う場合でも「机の上に何があるか」という問いの記述方法は分かりやすいが,「<100,250,50> <220,180,80> を対角線とする立方体の領域内に何があるか」のような記述は,記述そのものがしにくい上にユーザにも分かりにくい表記である. つまり,物体に関して位置を情報として使う問い合わせでは,何か別の物体を基準として,その物体との相対関係を使って問い合わせること(および回答が得られること)が望まれる.こうした"相対位置表現"を使った,イベント記述の需要は高い. 従来のシステムでも,相対位置表現は可能ではある.従来法では,目的毎に定義した(便宜的な)ルールを個別に解釈し,絶対座標をもとに位置的な上下関係や包含関係などの相対的な関係を計算で求めている.しかし,こうしたおざなりなルールの記述方法は,次の2つの問題を引き起こす. 1. 同じイベントを表現するルールが何通りにも記述できる(一意性の欠如).このため,ルールを追加するたびに,ユーザ自身がルールセット全体の一貫性をチェックする必要があり,ユーザの負担が重くなる. 2. 位置の変化を検出するルールの,効率的な評価法(計算法)がない.ルールの記述法が曖昧であるため,ルールの評価(計算)自体もルールごとに与える必要がある.こうした方法は,ルール数や扱う物体(データ量)が少ない限りは問題がない.しかし,この方法は本質的に,物体の数の二乗に比例して,評価すべきルールの数が増大するという問題がある.つまり,相対位置表現を実際のアプリケーションで利用するためには,ルールの記述に一貫性を確保することと,ルールの評価法を定式化することが必要である. その方法として,われわれは領域間の図形的な関係を表す8つの単語(disjoint, contains, inside, equal, meet, cover, covered by, overlap) に「support」を加えた8+1の関係(ルール)を base にして,物体の相対位置表現を可能にする方法を提案する.図形的な関係とは,図形間の関係を推論するために用いられる関係である.例えば「 図形 A の中に図形 B が入っており, 図形 B の中に図形 C が入っているならば,図形 A は図形 C を含む」というような推論に使われる.この図家関係は物理的に不変な現象に基づいているため,相対的な位置関係を必ず一意に記述できる(かつ解釈も一意になる).また,位置関係をこれらの9つの関係のみで記述することで,センサデータから位置関係の変化を発見する方法を,最終的には 6 つの関係の発見という問題に置き換えることで定式化(形式化)できることを示す.

2E-2 (時間: 15:25 - 15:50)
題名センサネットワークを構成する小型センサノードの状態可視化システム
著者*安西 徹 (長岡技術科学大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻), 柳沢 豊, 前川 卓也, 岡留 剛 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
Pagepp. 330 - 338
Keywordsensor network, ubiquitous computing, sensor node, visualization
Abstractセンサネットワークの技術はユビキタス社会を担う重要なインフラであり,これを用いてさまざまなサービスが提供されることが期待されている.従来センサネットワークを構成する,多数のセンサノードの状態を確認するためには,ユーザがデータをテキストやグラフの形式で閲覧する方法が一般的である.しかし,多数のセンサデータを同時に閲覧して動作を確認することは,ユーザにとっては大きな負担となる.そこで筆者らは,センサノードの状態をリアルタイムに可視化してユーザに提示することで,センサの状態や実世界で生じているイベントを直感的に理解しやすくするシステムの開発を行った.この可視化システムの要件としては,センサノードの状態が視覚的に確認しやすいこと,センサノードの異常を速やかに発見できること,センシングを行う様々な環境への適用が容易でに行えることである.本論文では,これらの要件を満たすシステムの設計および実装について述べる.

2E-3 (時間: 15:50 - 16:15)
題名光通信による大量のLEDマイコンユニットの一斉制御方式
著者*中田 眞深, 塚本 昌彦 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻)
Pagepp. 339 - 346
Keyword光通信, 電飾アート, LED制御, ユビキタスコンピューティング, ユビキタスデバイス
Abstract近年,発光ダイオード(LED)は低消費電力で長寿命,低発熱というメリットを生かし街頭のサイン,信号機から照明器具まで 生活の様々な場所で見られるようになった. 特にイルミネーションやウェアラブルファッションなどのLEDを利用した電飾アートはデバイスの技術向上に伴い その表現力の幅は広がっている.しかし,その動作は単純なON/OFFの切り替えやマイコンによる簡単なインタラクションの 導入にとどまっている. マイコンを用いたLEDの制御ではデバイスが大量になると個別にプログラムを書き込むことは難しくなる. そこで本稿では大量のLEDマイコンユニットの動作を動的に一斉に制御する方法としてプロジェクタを用いた方式を提案する. 提案手法では光を感知するセンサを搭載したデバイスにプロジェクタの光を照射し,マイコンがその情報を解析しLEDの動作を制御する. これを用いることにより大量のLEDの動的な一斉制御が可能となる.さらにカメラを用いれば デバイスからの情報を受信することができ,プロジェクタとカメラによる各デバイスとの双方向の一斉通信を行うことができる.

2E-4 (時間: 16:15 - 16:40)
題名加速度センサを用いたウェアラブルダンシング楽器システム
著者*藤本 実 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻), 塚本 昌彦 (神戸大学/工学部電気電子工学科), 藤田 直生 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻), 田川 聖治 (神戸大学/工学部電気電子工学科)
Pagepp. 347 - 354
Keywordウェアラブルコンピューティング, 加速度センサ, ダンス, 演奏システム, 音楽情報処理
Abstract 近年,コンピュータ技術の進化にともない,音楽エンターテイメントのあり方が大きく変化してきた.例えば,数年前アーケードゲームや家庭用ゲーム機市場で,ダンスダンスレボリューションやブラボーミュージックなど,新しい体感型音楽エンターテイメントが一世を風靡した.これらのゲームは音楽自体の楽しさと身体活動のゲーム性,爽快感を併せ持つ,音を使った新しい遊びのジャンルを確立したといえる. また,コンピュータにより,人と音楽を合わせた新しいインタラクションが考えられるようになったともいえる.これらの流行を機に,体感型エンターテイメントはさまざまな形に応用され,ドラム,ギター,和太鼓,マラカスなど楽器を再現するもの,ダンスのパラパラの動きをゲームにしたものなどが登場した. このような近年の状況において,コンピュータを利用した新しい楽器に関する研究も進められている.YAMAHA MIBURIをはじめとするさまざまなモーション系の楽器は,身体情報で音を表現する,新しい音楽表現の方法を取り入れるものである.しかしこれらは非常に素朴なレベルで音楽とモーションを関連付けるものであり,楽器としては操作が難しいものである.そして,これらの楽器は演奏の再現性が低いものであるか,表現力が不十分なものとして多くの人に受け入れられるまでは成長していないのが現状である.例えばダンスダンスレボリューションについて述べると,動作のパターンは4つのパターンに固定されており,決められたパターンの音楽しか演奏できない.また,YAMAHA MIBURIの場合では,演奏方法を覚えることにより,楽器で演奏しているかのように音を出力することが可能となる.演奏をするためだけならある程度は成立すると考えられるが,踊ることによって演奏などさらに高度なパフォーマンスには表現能力が不足している. ここで,近年急速に発展しているセンサやマイコンなどの組込み技術やウェアラブル,ユビキタスコンピューティングのシステム技術を用いることで,操作が簡単で,かつ,ユーザの動きと音楽をより密接に関連付けた高度な音楽表現が可能になるものと考えられる. しかし,これまで動きにより音を出し,演奏する装置は存在したが,ダンスのステップに直接結びつけたものはない.そこで本研究では,音を出すために動くのではなく,ダンスを踊ることによって音を奏でるという踊ることを前提に考えた装置を提案する. 実際のダンスによるパフォーマンスでは,クラシックから現代の新しい音楽,民族音楽から自然の音など無数にある音の中から音を選び,編集し,音作りを行う.これらの音から全体の構成を決め,音に合わせたフリ作りが始まる.つまり,音がなければダンスというものは成立しないともいえる. また,ダンスには展開があり,一つのショーとして完成させるためには,曲の雰囲気,曲のテンポを変えてアクセントをつけることも必要となる.そして音のパターンを変更できるようにすることで踊りの雰囲気を変えることができる.さらに音のテンポを変更できるようにすることで展開に幅を持たせることが可能になる.これらを実現するため,本研究ではスクリプト記述によるマッチングの機構を採用する. スクリプト記述は,コンパイル作業を省略し,簡単に実行できるようにしたプログラムを記述する方式のことである.これによりユーザはアプリケーション上で設定を記述するだけで動作設定を行うことが可能となる.つまり,簡単な文を記述するだけで,ユーザが自ら音を選択し,音のパターンの変更方法を設定し,曲の編集をするかのように展開をつけることが可能となる. システム内ではデータのマッチングにより動きを認識し,それを一つのパターンとして取り扱えるようにする.マッチングにはDPマッチングとしきい値の2手法を用意する.DPマッチングは,動的計画法(Dynamic Programming) によるマッチングを行う方式で,一度計算した結果を再利用して効率的に計算し,二つのパターンの要素間を対応付け,効率的に類似度を計算する方法である.センサから動きの3軸加速度データのサンプルを取得し,DPマッチングを行うことによって,ユーザ一人ひとりに対応させるシステムになっている.しきい値による解析は,設定した軸の加速度データの大きさだけで判断する.状況に応じて適している方式を用いることで,計算時間を短縮し,音の出力の遅延を抑えることができる.これにより,遅延によるダンスのステップと音のずれによる違和感の減少につなげることができる. 以上のように本稿では新しいエンターテイメントの形を提案する. 音選びから動きの選択,構成の決定まで行えるシステムを構築し,「踊ることにより演奏できる」という新たなショーの形を提案する.例えば,一人はドラム,一人はギターというように分けて踊ることによってダンスによるセッションと,音によるセッションが同時に可能となり,新しいショーとして成り立つようになるものと考える.