題名 | インターレースカメラによるフレーム内オプティカルフローを用いた高速移動対応の速度推定手法 |
著者 | *鈴木 雄貴 (神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻), 國本 佳嗣 (神戸大学大学院自然科学研究科電気電子工学専攻), 佐野 渉二 (神戸大学大学院自然科学研究科情報・電子科学専攻), 義久 智樹 (京都大学学術情報メディアセンター), 塚本 昌彦 (神戸大学工学部電気電子工学科) |
Page | pp. 293 - 302 |
Keyword | フレーム内オプティカルフロー, インターレース, 位置推定, 速度推定, 画像処理 |
Abstract | 近年のカメラの小型化・高性能化に伴い,カメラ画像から撮影対象やカメラの速度を推定し,それらの位置を把握する研究が盛んに行われている.例えば,イベント会場の一部を撮影するカメラを用いて参加者の移動速度を推定し,会場案内を行うナビゲーションシステムや,ロボットに搭載されたカメラを用いて移動速度を求める研究が挙げられる.これまでの研究のほとんどは,撮影対象の画像フレーム間の移動量から速度を推定しているために,画像に歪みやぶれが生じない程度の速度でしか推定することができず,1フレームにしか撮影されないくらい高速に移動する場合では,正確に速度推定できなかった.どれくらいの速度を高速とするかについてはカメラの性能に依存するが,筆者らの無線カメラを用いた実験では,歩く速度程度が高速移動に相当する.例えば,高速移動する撮影対象の速度推定を行う以下の場合が考えられる.
・例1 街中に設置されたウェブカメラを用いて,友人の位置情報把握のため速度を推定する.
・例2 自転車に設置したハンディカメラを用いて,繁華街の店の位置情報把握のため速度を推定する.
・例3 自動車に設置した高精度カメラを用いて,近接車の位置情報把握のため速度を推定する.
このため,筆者らの研究グループでは,高速に移動する対象の速度推定を行う手法としてカメラのインターレーススキャンを利用した速度・推定手法を提案している.インターレーススキャンとは,インターレースカメラで撮影した1フレームの画像を奇数走査・偶数走査の順でスキャンするものである.これまでの手法では,黒色円形マーカを使用し,インターレーススキャンによるフレーム内でのマーカのぶれを利用して速度推定を行っていた.既定のマーカを用いるため,処理負荷が軽くなるが,あらかじめ多数のマーカを設置する必要がある.
本研究では,フレーム内オプティカルフローを用いた速度推定手法を提案する.オプティカルフローとは,連続する2枚の画像のある点が次の瞬間にどの方向へどの程度移動したかを示すベクトル場であり,オプティカルフローを用いることで,マーカがなくても速度推定を行うことができる.従来のオプティカルフローによる速度推定は,連続する2フレーム間の輝度差分を用いているが,スキャン間隔の長さのために,画像がぶれる場合や,2フレーム間の画像に対して,オプティカルフローを求めるために区切る局所領域内に画像の共通部分がなくなる場合のように高速移動するものに対しては対応できない.提案手法では,インターレーススキャンを利用し,フレーム内の奇数走査画像・偶数走査画像を2枚の画像とみなしてオプティカルフローを求めることで,スキャン間隔より短い時間間隔の画像からオプティカルフローを求めるために高速に移動する撮影対象の速度推定を行うことが可能となる.
提案手法の評価としてカメラの移動速度とオプティカルフローベクトルの大きさとの関係を調べることで,従来のオプティカルフローを用いた手法に比べ,提案手法の方が高速移動に対応できることを確認した.また,実験環境の照度を変えて実験を行うことで,照度による精度の変化がないことを確かめた.提案する速度推定手法を利用すれば,対象物体の位置・大きさが分かっている場合は,移動物体の速度推定や移動コンピュータの自律移動への応用,また速度推定を行うことでカメラをマウス代わりとして用いるアプリケーションや,カメラを装着したダンサーの動きの早さにより光の明滅パターンを変えるダンスパフォーマンスなどへの応用が実現可能と考えられる. |