題名 | スマートフォンを用いた屋内向け3次元ARナビゲーションシステムの提案 |
著者 | *間城 裕喜 (神奈川工科大学大学院工学研究科情報工学専攻), 山内 俊明 (神奈川工科大学情報学部情報メディア学科), 鈴木 浩, 服部 哲, 速水 治夫 (神奈川工科大学大学院工学研究科情報工学専攻) |
Page | pp. 2002 - 2006 |
Keyword | スマートフォン, 拡張現実感, 屋内ナビゲーションシステム, ナビマーカー, 位置情報 |
Abstract | 1. はじめに
近年,携帯電話は処理能力が向上し,高性能,多機能なモバイル端末が続々と登場している.これに従って,様々なシステムが開発され,その中でも位置情報サービスが大きな注目を集めている.主に,人工衛星を利用した位置情報システムGlobal Positioning System(以下,GPS)や電子コンパスなどの携帯電話に搭載されているセンサーによって位置情報を取得できるシステムは,私たちの日常生活に欠かすことの出来ないものとなってきて,その重要性は,近年益々高まってきている.
一方で,GPSは屋内で位置情報を取得できない.携帯電話は,GPSが使えない場所でも携帯電話基地局による測位で現在位置を取得できるが,まだまだ精度は低く,誤差が生じやすい.また,不特定多数の無線LAN基地局から発する電波の情報を元に測位する手法は実現しているが,まだ信頼性は高くない.他にも様々な技術や手法が提案されているが,インフラが整っておらず,まだ実現していない.
また,既存のナビゲーションシステムは,2次元マップを用いているシステムがほとんどである.しかし,そのナビゲーションシステムを利用しているユーザーの中には,目的地までの道のりで迷ってしまい,どの方向に行けばいいのかわからなくて考えてしまう人がいる.
そこで,本研究では屋内測位に使えて導入しやすいマーカーを利用し,位置情報を取得する.そのマーカーを利用するためにカメラが必要なので,カメラが内蔵されているスマートフォンを用いる.そして,ユーザーを目的地まで迷わず,直感的に伝えるためにカメラの映像を利用し,目的地の方向を示す矢印や現在,ユーザーがいる場所の周辺情報をイメージタグの情報をカメラの映像上に重ね合わせて画面に表示するARを用いることで,リアルタイムに目的地までナビゲーションをするシステムを提案する.
2. 関連研究
屋内ナビゲーションの研究は既に行われていて,様々な方式が提案されている. 一番有名な方式として宇宙航空研究開発機構が提案したIndoor Messaging System(以下,IMES)という屋内測位技術である.発信する機器に経緯・経度・高さなどの位置情報が送信され,受信する機器(携帯電話など)は屋外のような複雑な計算を必要としないところがメリットであり,最も有望されている.しかし,IMES装置や管理にコストがかかるため,導入まで至っていない.他の方式として,無線LAN基地局を測位に利用する技術である.不特定多数の無線LANアクセス・ポイントを使用するため,精度は低いが,一番インフラが整っている.
本研究では,屋内測位で検討されている中の1つの方式であるマーカーを用いる.理由は他の方式では,必ず位置情報を発信する機器にコストがかかり,すぐに導入しにくい部分がある.一方,マーカーの場合は精度を向上させて遠く離れていても認識できるようにする必要はあるが,すぐに導入可能でコストもかからないので利用することにした.
3. 提案システムの概要
本システムは,屋内でユーザーが迷わずに目的地まで必要な情報をカメラの映像上に重ね合わせて画面に表示するARを用いたナビゲーションシステムである.以下の機能は,実装中である.
(1)画面表示
・AR表示
−進むべき方向を直感的に把握できるように矢印で誘導する.
−ユーザーが迷わないように周辺情報をイメージタグで表示する.
・分岐点距離表示
−ユーザーが直感でわかるように,分岐点などの案内地点までの距離を数値で表示する.
(2)検索
・フリーワード検索
−ユーザーが思いついたキーワードを自由に入力する.
・目的検索
−屋内にある食堂や自販機など,目的にあった検索する.
(3)ルート探索
・最短ルートをユーザーに提示することはもちろん,目的地まで行くことが可能なルートがあれば,最大3ルートまで表示させる.
4. 考察
提案システムについて以下の点を評価・検討する予定である.
・マーカーの認識精度と位置情報の取得(マーカーを認識する際,誤認識と間違った位置情報を取得しないか)
・ユーザーが屋内のどの場所からスタートしても目的地までたどり着くことができるか.
5. おわりに
屋内でもユーザーを迷わずにナビゲーションするシステムを提案した.現在,提案システムの製作を進めている.今後は,システムが完成次第,有用性を評価する実験を行う予定である. |